佐々木弘さん(ソフトウェア開発会社勤務)
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ベトナムにいるなら受身じゃだめ。
仕事も遊びも、楽しむためには積極的に。 |
プロフィール
1972年横浜生まれ。神奈川大学法学部卒。1991年(財)横浜市海外交流協会のプログラムで、初訪越。1998年、仕事のオファーをきっかけにベトナムへ移住。ITや通信、ソフトウェア関連の会社に勤務。現在、フジオーネ・テクノロジーズ・ベトナム株式会社(FTS)ベトナム最高責任者。 |
ベトナムブーム到来をまだ見ぬ1991年。大学生だった佐々木さんはその年、自治体による国際交流グループのメンバーとして初めてベトナムを訪れた。
「ホーチミン市、ベンチェー、ヴンタウを訪問し、人民委員会委員長にお会いするなど貴重な経験だったと思います。当時はベトナムにいる外国人は今と比べると少なかった。だからとても珍しがられて、いろんな人に紹介されたんです。」
大学卒業後は日本で経営コンサルティングの会社に就職。
「日本での仕事はとても上手くいっていたし、仕事の基礎は日本で身につけられたと言えるでしょうね。」
しかし、次第に彼は日本にいることに行き詰まりを感じ始めた。
「日本では『やっていい』と言われたことしかできなかった。『やっては駄目』以外のことを認める、というのが普通のはず。誰もが常に周りを気にしながら生きている。」
そんな時偶然、ベトナムでの仕事のオファーがあった。その会社は、IT関連企業。バックグラウンドがないにもかかわらず、勉強することで遅れを取り戻した。
「ベトナム人は勤勉だし、物覚えも速いから、ポテンシャルはすごく高い。実際、日本の本社では中国やベトナムからの留学生を採用していますが、研修中の成績トップ数名はいつもベトナム人。ベトナムにいる現地採用者も、お金をもらうからにはプロとしてこの国に仕事をしに来る、という意識が大切だと思います。」
その後も、ITや通信関連の企業で働き、今ではソフトウェア開発会社のベトナム支社で最高責任者に。当初5人だったスタッフを、わずか1年の間に200人に増やし、その全員がフル稼働しているという実績もあげている。
順調に前進しているように見える彼だが、悩んだ時期もあった。
「ベトナム人ではなく、約束を守らない日本人のために大変なことが重なり、一時は帰国を考えました。ベトナムにいる積極的な意味がなければいる必要はないと考え、タイムリミットを設定したことで、逆に頑張れた。時には背水の陣を敷くことも大切なのかも。」
その結果、今では会社の信頼を獲得し、事業拡大に向け自由に動けるように。
「日本では、自分の今の年齢でここまで自由にはさせてもらえないと思う。せっかくベトナムでチャンスを得たのだから、今後はこの国を中心に世界を目指したい。今の時期にベトナムにいることは幸運だと思います。」
仕事が楽しいから遊びも楽しい。
「休みの日には友人たちとオフロードバイクで遠征したり、パーティーをしたり。プライベートが楽しめるのも、仕事が充実しているからこそ。人生を何倍も楽しめている気がします。ベトナムにいることで、失うものももちろんあります。情報とか時間とか。失うものと得るもの。この2つを秤に掛けて、得るものが大きいなら、ここにいる価値はあると考えています。」
(2005年9月号/2005年9月29日 木曜日 8:25JST更新) |