松崎 真子さん(ファッションデザイナー)
ないのなら、工夫する。
それが私の仕事なんです。
プロフィール
まつざきまさこ 1971年埼玉生まれ。武蔵野美術大学でテキスタイルデザインを学び、同大学大学院を修了後、アパレルメーカーにて布地の商品開発に携わる。その後、デザイナーを目指し服飾学校に入学。2002年、初渡越。在ベトナムアパレル会社での勤務を経て、2005年1月にオープンしたブティック「mauve」にて、デザイナーとして全商品を自ら手がける。
「物を形にするのがデザイナー。だからデザイナーになったんです。」
大学と大学院でテキスタイルのデザインを学び、日本のアパレルメーカーで布地を企画。そして現在、ベトナムで洋服からバッグ、アクセサリーに至るまで、オリジナルの商品を提供するファッションデザイナーがいる。それが松崎真子さんだ。
「ベトナムの洋服のデザインは、日本人には合わないものが多くて。私自身を含め、困っている在住者の人たちが普通に着られるものを作る。それをお店のコンセプトにしたんです。」
彼女のお店があるのはホーチミン市の中心部、旅行者が行き交うマック・ティー・ブイ通り。ベトナム流の細長い間取りに、彼女のアイデアの詰まった商品が、程よいバランスで並べられている。
「日本では布のデザインと商品デザインは別。分業されていたので、出来上がった商品に対して『どうしてあの布を使ってこれを作るの?』と思うこともよくありました。」
自分のデザインを商品に活かしたい。そのために彼女は学校へ通い、パターンの勉強をしなおした。そしてデザイナーとしての道を、ベトナムで歩みはじめることとなる。しかし、デザイナーといえば聞こえは良いが、実際は商品管理から販売まで、全ての過程を仕切らなくてはならず、その苦労も多いという。
「ただ、お店に立つことで、お客さんの反応を直に見ることができる。そこで『もっとこうしないと』と、今まで見えなかった側面がどんどん見えてくるのは面白いですね。最初から最後までしなくてはいけないけれど、それが物を作るということだと思うんです。」
オープン以来、生み出された商品は120アイテムを軽く越えた。今でも月に10点ほどの新作が登場し、企画した商品は次の週には店頭に並ぶ。日本ではまずありえないスピードだ。
「種類がない、色落ちも激しいなど、布ひとつとってもベトナムには多くの問題があります。でもだからこそ工夫するようになりました。そしてその工夫をすぐに形にできるのがベトナム。立てた企画を通すだけでも幾つもの許可を取り、制作にも時間がかかる日本とは違い、思いついたアイデアをすぐに試せます。せっかちな性格ですから、その速さはたまりません。」
そう笑う彼女だが、たとえ環境があったとしても、活かせるかどうかは人次第。しかし試作を繰り返すことで、自分のデザインにより幅を持たせることができたという彼女。つまり、様々な制約が付きまとうベトナムのファッション事情の中、何とかしてしまうのが、彼女のもの作りなのだ。
「与えられた素材を100%活かすのがデザイナーの仕事。だから工夫して作るのも私の仕事なんです。そう考えると、素材が有り余っている日本では、自分のデザインを見失っていたかもしれません。だから今はこの状況を追求したいと思っているんです。もともと私の専門である布自体のデザインも、今はまだ無理ですが、近いうちにこのベトナムで試してみたいと思っています。」
(2005年7月号/2005年7月20日 水曜日 9:26更新) |