伊藤淳一さん(ベトナム情報市場)
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新聞の紙面には
ベトナムらしさが溢れています |
プロフィール
いとうじゅんいち。1974年愛知生まれ。大学で日本語教育学を学び、卒業後はホーチミン市で日本語教師をつとめる。仕事のかたわら2002年から「ベト君とナム君の一口ベトナムニュース」を運営し、今年6月には「ベトナム情報市場(いちば)」(www.viet-jo.or.tv)としてリニューアルした。ベトナム人の夫人とホーチミン市に在住。 |
ベトナムの新聞紙面を飾ったニュースを日本語に翻訳して伝えるウェブサイト「ベト君とナム君の一口ベトナムニュース」が、6月「ベトナム情報市場」としてリニューアルオープンした。約3年前からこれを1人で作ってきたのが伊藤淳一さんだ。
「元々は、ベトナム語の勉強のつもりだったんですよ。今でも、これで収入を上げているわけではなく、趣味の一環なんです。」という伊藤さん。しかし毎日7〜8種類の新聞に目を通し、取り上げる記事を探すのに2〜3時間も使うというから、気合が入っている。「見出しが面白そうに見えても、中身がそれについて触れておらず、肩透かしを食らうこともあります。また、同じ事件を取り扱った複数の記事を読み比べると、新聞社によって事実関係が食い違っていて、何が正しいのかが分からず訳せない場合もあります。そういうわけで記事を選ぶのが、一番時間のかかる作業なんです。」
また新聞記事は、その事件の背景などが分からないと、正確な翻訳をするのは難しい。「3年間、新聞記事を読む作業をずっと続けていたので、ある記事を読むと、その背景を覚えていたりするんですよ。継続で身についた、そういった知識に助けられることは多いですね。」他のニュースサイトでも必ず取り上げられると思われる、メジャーな記事はあえて追わない。それより、ベトナムに住んでいる人の興味を引くような話題、特に、日本人の目から見て、とてもかけ離れたベトナム人の習慣や考え方が反映されている記事が、伊藤さんの狙いだ。
そもそも大学で日本語教師になるための勉強をしていた伊藤さんは、日本語教師として働くため約7年前ホーチミン市にやって来た。ある時、周りに溢れている新聞や雑誌を見て「これが読めないのは損だ」と一念発起し、ベトナム語の勉強を開始。その1つとして、新聞の翻訳を始めたのだという。約1年前からはほぼ毎日更新している。「異国で生活をする上で、情報の多寡は大きな要素だと思うんですよ。私の場合、言葉を勉強して情報が得られるようになると、住み続けることへの安心感が増しました。住み続けたいと思うと更に知りたくなります。相乗効果なんですね。」
今後は、こうした情報発信を仕事としてやっていくことも考えているというが、伊藤さんの場合、一番先に立つものは知的好奇心らしい。「ニュースサイトを続けていると、これまで余り知らなかった、ベトナムの伝統文化や風習も知ることができます。それが嬉しいんですよ。」ベトナムと日本は共に中国の影響を強く受けており、両国には同じような風習がある。ベトナムの風習を知ることで、日本にも類似の風習はないかと興味を持つこともあるそうだ。
「このサイトを続けることで、言葉の勉強以上のものを教えてもらったような気がします。」
(2004年8月17日 8:54更新) |