金井千波さん(日本語教師)
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教師はすべて日本人
私達から日本文化も学んで欲しい |
プロフィール
かないちなみ。群馬県生まれ。12年間の会社勤めに終止符を打った後、自らの視野を広げるためアジア各国を9ヶ月間旅行。帰国後、EII教育情報研究所(EII)の養成講座に参加、日本語教師に。2003年11月にジャブリ国際交流センター(www.jabli.com)ベトナム校の校長としてベトナムに赴任。これまで訪れた国の数は34か国。同校の連絡先はjic_vn@hcm.vnn.vn。 |
日本語学校はたくさんあれど、ホーチミン市にあるJICベトナム校のように「教師は日本人のみ」という所は珍しいだろう。そこで校長を務めているのが、日本語教師の金井千波さんだ。
授業の進め方も、一般的な日本語学校とは違う。1クラス平均3〜4人という少人数制で、時には教師が2人つく。授業中に使われるのは日本語のみ。講義形式ではなく、対話中心で授業は進められる。
「先生が一方的に講義して、生徒はそれを聞くだけという、暗記型の授業スタイルでは、なかなか実力は身に付きません。ところが、ベトナムの学校教育は暗記型中心。ですから私達の学校のように、教師の質問に対して、生徒が自分で考えて答を出すというスタイルは、ベトナムの生徒さんには大変みたいですね。」
もう一つ、生徒達と接していて感じるのが、ベトナムの人たちの「プライドの高さ」だそうだ。「先日やって来られた生徒さんなんですが、日本語の実力を計るためのテストをしたところ、本人が希望しているクラスに入れるだけの実力に満たなかったんです。そうすると、ご本人は『テストがあると知らなかったので、実力が発揮できなかった』と抗議。『物足りなかったらすぐ上のクラスに移って頂きますから』と言っても、耳を貸してもらえなくて。とにかく下のレベルに入るのは体面が悪くて嫌なんですね。」
事前にテスト対策をして高い点を取り、レベルの高いクラスに入ったは良いけれど、実力不足で授業についていけないケースもあったそうだ。文化や習慣の違いが原因で、授業がうまく進まないこともある。「忙しくて〜する『どころ』ではない」と「それは〜する『ところ』ではない」の違いに触れた時のこと。後者の例文として「スナックは子供の行く『ところ』ではない」と言ったところ、「先生、ベトナムでは子供だってスナックに行きますよ」と話題がそれてしまって、話がうまく「オチ」なかったそうだ。
ところで日本語は、ベトナムで英語についで2番目に学習者が多いと言われる言語。人数が多いだけでなく、その学習に対する熱意も高い。「ヨーロッパだと、趣味的に勉強される方も少なくないのですが、ベトナムの人は『留学したい』『就職に役立てたい』など、目的が明確なので、教育効果に対する見方もとてもシビアです。」だからこそと言うべきだろうか、「ベトナムで一番高いと思います」(金井さん)という授業料にも関わらず、JICベトナム校では常時100人近い生徒が学んでいる。
「言葉の習得には、背景にある文化への理解が必須ですよね。日本人教師だと色んな形で日本の文化に触れることができます。私達はここで、言葉を通して文化を、文化を通して言葉を、ベトナムの人達に伝えていきたいと思っています。」
(2004年6月28日 8:31更新) |