江田要さん(不動産エージェント)
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大家と借り手の溝を埋めるのは
私たち夫婦の「あうん」の呼吸 |
プロフィール
えだかなめ。1959年、神奈川県生まれ。1993年まで岩国の米軍基地で仕事をしていたが、国外で仕事をしようと1994年、ホーチミン市に移住。1996年からは不動産業を営む。ベトナム人の奥さんと9歳になる息子さんがいる。
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「ベトナム」「不動産」「日本人」という3つのキーワードを満たすとなると、「この人しかいない」と言って良いのが、ホーチミン市で「江田不動産エージェント」を営む江田要さん。江田さんが今の仕事を始めるようになったのは、不動産売買で痛い目にあったのがきっかけだった。
「商売をしようと思って、グエンフエ通りで売りに出ていたキオスクを買ったんですよ。その時は知らなかったんだけど、そこは立ち退き予定エリアだったらしいんです。3ヵ月後にはせっかく買った店を2軒手放すことになってしまいました。」ところが不動産がらみのトラブルに巻き込まれていたのは、江田さんだけではなかった。それを知って「信頼できる不動産業者を必要としている日本人は、きっといっぱいいるに違いない。じゃあ自分が」と不動産業を始めることにしたのだ。
まず家探しをしている人に宣伝するため、チラシを作って日本料理店などに配ることから始めた。それと並行して町の中をバイクで走り回り、家や部屋を貸しに出している大家さんを探す。見つけると入っていって話をし、名刺を置いて帰って来る。そうしてコツコツと足で情報を集めた。しかし、貸し手はベトナム人で、借り手は日本人。双方が考える「常識」の間には大きなギャップがあるので、物件探しより、成約に至るまでのほうが苦労が大きい。そこで忘れることのできないのがベトナム人であるタオ夫人の存在だ。
「大家と借り手の間で話が対立したときは、妻はベトナム人の側に立って大家さんをなだめ、私は日本人の側に立ってお客様に理解を求め、交渉を進めるんですよ。妻と私の間では『あうん』の呼吸で『ここらへんが落としどころ』というのが分かりますから、借り手と貸し手の両方が納得できる着地点を探るわけです。」大家と借り手の両側に、理解を示してくれる同国人がいると言うのがポイントで、「例えバイリンガルの人でも、1人じゃ上手くいかないと思います」と江田さんは言う。しかも江田さん達の場合、夫婦なので対等の立場でものが考えられ、更にお互いの文化にも理解が深い。そんなコンビネーションがあるからこそ、江田さんの仕事は成り立っているのだ。
江田さんのリストには100人を超す大家が名を連ね、現在ホーチミン市に住む日本人のうち、およそ150人が紹介を受けた物件に住んでいる。今も、新しい物件を求めてバイクで町の中を走り回っているので、顔はいつも日焼けで真っ黒だ。「住への需要は高まる一方だと思いますし、他の商売に鞍替えすることは考えないですね。」
最後に、不動産物を探す人へのアドバイスを。
「ベトナムの物件はタイミングがすべてです。似たような物件がいくつも出てくるということはありません。これぞという物件を見つけたら、ぜひ即決してください。」
(2004年5月17日 7:52更新) |