的場信樹さん(車レンタル業)
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サイゴンとアンコールワットを
クラシックカーの街に |
プロフィール
まとばのぶしげ。1960年、大阪市生まれ。大学在学中にアメリカに2年間留学。卒業後は、家業の工業部品メーカー、経営コンサルタント会社で勤務した他、政界でも活動。1998年ベトナムへ。クラシックカーを中心とした車レンタル会社・サイゴンヴィンテージカーサーヴィスを設立し、現在に至る。 |
「今、手元にあるクラシックカーは29台。そのうち23台がシトロエンです。」と、カーマニアならずとも羨ましくなるようなコレクションを持っているのは、ホーチミン市在住5年の的場信樹さん。元来古いものが好きで骨董バイクをいろいろ購入しているうちに「古い車もあるけどいらないか」と声がかかり、それ以降、気に入った車を次々と買っていると、「気が付けばこういうことになっていた」そうだ。
「ホーチミン市は、フランスの影響が色濃く残る街なんで、フランス車のシトロエンが似合うんですよ。」それらクラシックカーたちの平均車齢は60歳に及ぶ。入手した車は再生が必要だが、ベトナムにはこういった車の修理経験を持つ職人さんがまだ健在。車に詳しい的場さんからの細かい注文に応え、一つ一つ手作業で直していく。古い車体に最新のエンジンを積んで走っている「似非クラシックカー」もある中、的場さんは徹底して本物志向。基本的に元々車についていたオリジナル部品を補修して使っている。
「その点でもベトナムは恵まれてますね。フランス本国でお払い箱になったシトロエンたちが運ばれて来た時に、補修パーツ類もベトナムにやって来たんです。それらも可能な限り入手するようにしています。60年前に作られたまま一度も使われていない新品パーツもあるんですよ。」中には昭和初期に作られた古いシトロエンもあるが、そんな昔に作られたエンジンも現役。時速も100キロ程度は出るのだそうだ。
最初は趣味で集めているだけだったが、今は、これらの車やバイクを映画撮影や結婚式に貸し出している。「もちろん、ブレーキ等の安全性に関わる部分は新しい部品を追加して、現代でも安全で快適に乗れる車にしています。エアコン等もつけてますが旧車の雰囲気を壊さないよう心がけています。」旅行者向けにも貸し出して、クラシックカーで市内観光を楽しんでもらいたいという希望はあるが、「故障時に、すぐに代わりの車が手配できる態勢や、古い車の運転に慣れた運転手の育成ができてから」。そのために必要な自前の修理工場兼車両基地用の土地は、既に購入してあるそうだ。
これだけのコレクション、色んな人から「売って欲しい」という依頼が引きもきらないが「大抵は儲けることが目的の人なので売りません。これらの車たちはベトナムの文化遺産。現地に置いときたいんです」と言う。カンボジアのシェムリアップにも車を置いてあり、昨年からは、そこでも業務を開始した。「アンコールワットの街・シェムリアップも、古い車が似合うと思うんですよ。夢は、ホーチミン市とシェムリアップを、クラシックカーの街にすることです。」
(ベトナムスケッチ2004年2月号) |