SAKAI(境恒春さん/歌手)
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まずはベトナムで
次は世界の舞台に立ちたい |
プロフィール
本名、さかいつねはる。1979年、宮城気仙沼市生まれ。高校卒業後、東京、埼玉県でストリートパフォーマンスを中心に活動。2001年に日越合同プロジェクトにより、数100名の中から選ばれ、ベトナムの国民的歌手ゴクソンの弟子としてデビュー。昨年、日本で1stシングル「かわいい君へ」を発売した。 |
高校卒業後、歌手になる夢を抱いて家出同然で上京した一人の青年が、今、ベトナムのステージで活躍している。本名、境恒春さん、ベトナムでは日本人歌手「SAKAI」。きっかけは3年前。所属していたプロダクションのプロジェクトで、ベトナムで日本人を歌手デビューさせる話が舞い込んだ。ベトナムといえば未だ戦争のイメージしか抱いてなかった境さんだったが、世界を舞台に活躍できるならばとオーディションに挑戦する。結果、見事合格。その翌月には未知の国ベトナムへと旅立って行った。
ベトナムでは国民的人気歌手のゴクソンさんのもとに弟子入りし、ベトナムポップスを学んだ。「実はベトナム語は今でもあまり話せないんですよ。歌はメロディーで覚えていきました。でも、大変だったのは歌よりも振り付けですね。僕はダンスがあまり得意じゃなかったから、毎日何時間も練習をしました。」歌やダンスだけでない。弟子入りということは、師匠の身の回りの世話までしなくてはいけなかった。「なんで僕はこんなことやっているんだ!」と、葛藤の毎日だった当時を語る。
ベトナムではゴクソンさんと一緒に、全国200カ所のステージをまわった。「ベトナムのステージは打ち合わせがほとんどないので、ハプニングがつきものでした。一晩で通常4ステージ。それをこなすには、移動して歌ってまた移動しての繰り返し。ところが同じ曲でもステージによってキーの高さが違ったりするんですよ。ベトナムではバンドが歌手に音を合わせるのではなく、歌手がバンドに合わせなきゃいけないんです。だからいつもどうなることかとドキドキしてました。ホントいうと今でもまだ慣れていませんけど(苦笑)。」
日本とベトナムの違いはまだある。
「日本では著作権がきちんとしていますよね。でもベトナムでは著作権が確立していないんです。CDを出しても収入は吹き込み代だけ。いくらヒットしたって印税生活は送れません。だからどんな大物でもステージで稼ぐしかない。歌ってナンボの世界なんです。」そんなベトナムでの経験を経て、境さんは日本での活躍を目指して帰国した。「ベトナムで歌手デビューをしたといっても、日本ではなかなか通用しませんでした。最近はテレビの仕事も増えてきましたが、まだまだ力不足ですね。でも、僕を励ましてくれるスタッフのおかげで、僕はいつでも前向きでいられる。彼らがいなければ僕はここまで頑張って来れなかったと思いますよ。」
最後にこれからの夢を尋ねてみた。
「やはりまずベトナムで認められたいですね。今はまだゴクソンさんの弟子としてのイメージが強い。いずれは一人でもやっていけるように頑張っていきたいです。そして日本での活躍も目指したいです。でも僕の本当の夢は世界が舞台。あんなに僕のことを嘆いていた両親も、嬉しいことに今では僕を応援してくれているんですよ。」
(ベトナムスケッチ2004年1月号) |