渋田真弓さん(Qi SAIGON)
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ハプニングさえも楽しい
私、前世はベトナム人だったと思う |
プロフィール
しぶたまゆみ:1976年、東京都生まれ。美容師歴10年のキャリアを持つ。2001年にベトナム人と結婚し、移住。サイゴンのビューティーサロン「CARITA」で2年間の勤務を経て、今年8月「Qi SAIGON」に転職。現在は一児の母。 |
「ベトナムに初めて訪れたのは今から5年前。女友達と旅行に来たんです。その時、泊まっていたホテルのレストランに、好みのタイプの男の子が働いていて、私、ナンパしちゃったんですよ。あなたのバイクの後ろに乗せて欲しいって。」インタビューを始めて早々に、プライベートな話をオープンに語ってくれるのは、サイゴンで美容師をしている渋田真弓さん。ナンパで始まった彼との交際は、Eメールが当たり前のこのご時世に、手紙という古風なスタイルで愛を育み、3年の月日を経て結婚に至った。
「手紙は英語で書きました。そのために私、英語を習ったんですよ。とにかくお互い盛り上がっていたから、いざ結婚が決まってベトナムに暮らすことになっても、不安はありませんでしたね。結婚前に彼が両親に宛てた手紙にも、『僕が養っていきます』なんて書いてありましたから。」しかし現実はシビアだった。養ってくれると言った彼のお給料だけではとても生活はできそうにない。新婚生活のスタートは友人宅を間借りすることになったが、四畳半にも満たないスペースだった。
けれども、ここでショックを受けないのが真弓さんの持ち前のバイタリティー。「私、こっちに来ても働くつもりだったんです。18歳の時から美容師をやっていて、この仕事が好きだからずっと続けたいと思っていたんですよ。だからサイゴンで職が見つかったときはラッキーでしたね。」日本にいた時は、とにかく仕事が忙しくて自由な時間が持てなかった。その頃に比べれば、ベトナムで仕事と子育てを両立するのはそれほど大変ではないという。むしろ仕事と家族と過ごす時間がバランスよく保てて、充実しているようだ。
結婚してちょうど2年。現在は、1歳になる娘さんと3人の生活。「もうどっぷりローカルな生活ですよ。川向こうの7区に住んでいるんですが、ゴキブリ、ネズミは日常茶飯事。下水が溢れ出して家の中が水浸しになったり、毎日がハプニングだらけ(笑)。」そうはいっても、そんなハプニングを真弓さんはなんだか楽しんでいるように見える。ところで仕事についてはどうだろう?「仕事もハプニングだらけですよ。以前勤めていたサロンでは停電や節水がしょっちゅうありましたからね。ろうそくの灯りの中でカットをしたり、シャンプーの途中で水が出なくなってお客さんを長時間待たせてしまったこともありましたよ。」
そんなハプニングに満ちたベトナム生活だが、ストレスはあまり感じたことがないという。「私、前世はベトナム人だったような気がするんです。ベトナムで経験したことを人に話すと、よく我慢できるわねとか、強いわねってみんなに言われるんですけど、別に全然頑張っていないんですよ。普通に生活しているだけなんです。」
最後にこれからについて尋ねてみた。「この国が好きだから多分、永住かな。いつかベトナムで自分の店が持てたらいいなって思っています。」
(ベトナムスケッチ2003年11月号) |