郷康晴さん・中山瑞樹さん(アジアンキッチン)
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僕たちは
楽しみながら働きたい |
プロフィール
ごうやすはる:1972年北海道札幌生まれ。
なかやまみずき:1975年北海道札幌生まれ。
仕事以外での共通の楽しみは、常連のお客さんたちとビアホイへ行くこと。飲みすぎて起きられず、店のオープンに間に合わなかったことも数回あり。
アジアンキッチン
住所:185/22, Pham Ngu Lao,Q.1 TEL:08-8367397
営業時間:午前7時〜深夜0時 |
旅行者に人気のホーチミン市、ファングーラオエリアに、リーズナブルな価格で日本食が食べられる店がある。その名は「アジアンキッチン」。昨年9月にオープンして以来、在住者を中心に口コミで人気を集めている。店を仕切るのは郷康晴さんと中山瑞樹さん。仲がいい友達かと思ったら、実は二人はいとこ同士。すでにベトナムに暮らしていた中山さんのお父さんを頼って、はるばる札幌からやって来た。
「ベトナムに来たのは実は初めてなんですよ」と郷さん。「僕たちはそれまで札幌で職を転々としながら、それぞれ気楽に過ごしていたんです。でも、そろそろ心機一転して何かをやりたいなって漠然と夢を描いていました。そして考えたのがレストラン経営。ベトナムに決めたのは、たまたまおじさんが暮らしていたからなんですよ」。ベトナムについて熱く語ってくれるかと期待していたが、拍子抜けの始まりだ。しかも二人は、料理を修行した経験もないと言う。
「店で出す日本料理は、僕が一人暮らしをしていた時によく作ったメニューなんです」と中山さん。「店のメニューは、日本にいればどこでも食べられるような簡単なものばかり。海外の日本食レストランというと高級なイメージがあるけれど、僕らが目指しているのはそんなんじゃない。ふらっと気軽に入れるような、アットホームな雰囲気の定食屋や居酒屋が僕たちの理想です。ベトナム人にも気軽に食べてもらいたいですね」。ベトナムや料理に詳しいわけでもない二人。まして経営者としても初めての試みだ。慣れないことばかりでさぞ苦労したかと思ったら、そうでもないと言う。「僕たちはベトナムで大もうけをしようとは思っていません。食べていけるだけの儲けで十分です。だからあくせく頑張るつもりもない。だけど、どうせなら自分たちも楽しんで働きたいと思っています。だから僕らはただ料理の注文を受け、提供するだけではなく、お客さんとのコミュニケーションを大切にしています」。
コミュニケーションといえば、ベトナムスタッフとはどうなのだろう?「言葉の壁もあり、多少の苦労はありましたよ。ベトナム人は子供みたいなところがあって、こっちが強くこうしてほしいと指示するとふてくされたり、ひとつのことで頭に来ると一日中機嫌が悪かったりして手がかかるんです。でも、こっちが気分を乗せてあげると、どこまでも乗ってくる。見ていて楽しいというか憎めないんですよ。いろいろありましたが、今ではスタッフは家族みたいな存在です」。
知らない土地で、自分たちの力で何かを始めるのは容易なことではないはずだ。しかし、彼らはこれまでのことを何も苦労がなかったかのようにさらっと話す。ベトナムは肩に力を入れて働くところじゃない。楽しみながら働くことがベトナム流であることを彼らに教えられた気がした。
(ベトナムスケッチ2003年6月号) |