浅井崇氏さん(Individual Systems社長)
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ベトナム人のプロ集団を率いて
世界を舞台に勝負をしたい |
プロフィール
あさいたかし:1973年生まれ。初渡越は1995年。2002年にソフトウェア開発会社Individual Systemsを設立。2003年には、在住日本人4人でハードウェアを扱うMankichi Computerを立ち上げ、日系ベトナム進出企業向けのSIサービスを始めた。 |
昨年、日本で開かれた「アジア太平洋・ロボットコンテスト」で、19の国と地域から参加した強豪を相手に、ホーチミン工科大学が見事優勝をさらって話題になったことは、まだ記憶に新しい。そんなベトナムで、ソフトウェア開発の会社を起業、現地人プログラマを率いて、世界を相手に仕事をしようとしているのが、浅井崇氏さんだ。
「ベトナム人プログラマのレベルは決して低くないんですよ。実際、IT大国アメリカでは『インド、中国に続く、第3のプログラマの宝庫はベトナムでは』と言われ、引き抜きに来る会社も絶えないくらいです。」しかし、ベトナム人プログラマが、海外に移住して戻って来ないとなると、ベトナムという国にとっては、言わば「頭脳流出」である。「そうではなくて、ベトナム人はベトナムに根をおろして頑張ったほうが、幸せだと思うんですよ。そういうこともあって、私はベトナム人プログラマのデータベースを作ろう、そしてそのネットワークを使って海外の会社からの仕事を受注しようと、思い立ったんです。」
VITE(Vietnam IT Engineer)-NETと名づけられたデータベースに登録されているベトナム人技術者の数は、現在ざっと600人。海外の会社からのソフト開発の仕事を受注している。「今まで、海外からベトナムに仕事を発注する際には、安さだけが取り得と見られがちでした。しかし『安かろう悪かろう』では、いずれ淘汰されてしまいます。ベトナム人の技術者は、仕様書に基づいてソフトウェアを作成することは上手ですが、全体的な設計という点になると、まだ日本のレベルには達していません。そこを学んでもらって、ベトナムからも高品質の製品を送り出せるようにしたいと思っています。」
そんな浅井さんが力を入れているもうひとつの事業が、ベトナム人IT技術者向けの日本語教室。「アメリカや日本に行くとなると、技術力だけではなく語学力も必要です。私の会社では、日本の会社に派遣することを前提に、言葉だけでなく、ベトナムと異なるビジネス習慣に関する教育も含めた、総合的な研修を行っています。」
JVPE(Japan Vietnam Portal Education)という名前で2002年3月に開講したこのプログラムには、40人が参加。9月に修了した第1期生のうち、4人の日本の会社への派遣が決まっている。1995年、大学卒業後のちょっとしたモラトリアムのつもりで、軽い気持ちで訪れたベトナムだったが、その後の留学生活、日本の会社の社員としての駐在生活など、様々な経験をへて、ついにはベトナムで自分の会社を運営するまでになった。
浅井さんの親友であると同時に、仕事のパートナーでもあるのは、日本で知り合った同い年のベトナム人・コアさん。コアさんは、Nha Vuiという会社の起業社長として今や市の名士だ。「彼がベトナムに帰国する直前に、話し合った『35歳になったら会社を立ち上げよう』という夢は、予定より早く実現してしまいました。しかしこれに安住せず、ベトナム人のプロ集団を率いて、広く海外に打って出たいなと、2人で話し合っているんですよ。」
(ベトナムスケッチ2003年3月号) |