舛田野子さん(青年海外協力隊隊員)
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まず泳ぎの基本を教えることから始まりました |
プロフィール
ますだなおこ:1977年生まれ。25歳。ソウルオリンピックに出場していた小谷実可子元選手の演技を見て、小学6年生からシンクロを始める。1997年、99年には日本ナショナルチームに所属。現在、青年海外協力隊の一員としてシンクロを指導。 |
◆実は、ベトナムで「シンクロを教えている」と聞いて、驚きました。
大学の卒業旅行に一緒に出かけた友人が旅行中にふいに言ったんです。「協力隊の試験を受けようと思ってるの」と。それまで協力隊のことをあまり知らなかったんですが、友人の話を聞いているうちにこんな活動があるんだと思うようになって、どんどん関心がわいてきました。当時、就職も決まっていたんですが、やっぱりどこかでシンクロと関わっていたいという思いが心のどこかにあったみたいで…。それで、協力隊の試験を受けてみました。
◆ベトナムを選んだ理由は?
募集要項をチェックしていたら、要請が2カ国から来ていました。ベトナム以外の国は、1年ごとの巡回指導といってシンクロの普及そのものに主に力を入れるかたちを取るものだったので、2年間ひとつの場所でしっかりと教えたかった私は迷わずベトナムを選びました。選手時代の自分を振り返ってみても、「楽しむ」というよりは競技スポーツとしてやってきたので、上を目指す人たちの指導をしたいと思いました。
◆具体的な活動内容を教えて下さい。
火、木、土曜日の週3回、18:00〜20:00までの2時間、20人の子供たちに教えています。でも赴任してやらなければならなかったことは、まず泳ぎの基本を教えることでした。シンクロは基本の4種目(クロール、平泳ぎ、背泳ぎ、バタフライ)を泳げて初めてできるものなんですが、不充分な子供たちが多かったので、水泳指導から始めました。最初はなかなか成果が出なくて苦労しましたけど…。
◆今のベトナムのシンクロはどうですか?
圧倒的にシンクロ人口が少ないのが残念です。年に6回競技会が行われているのですが、競技人口が少ない分、身内の発表会のような感じになってしまいがちなんです。そうなると、人間って「この人より技術をあげてやる!」という闘争心がなかなかわいてこないものです。競争心、向上心を持てる環境をこれからもっとたくさん作らなければなりません。
◆そのために具体的に何かされていることはありますか?
日本人の演技をビデオで見せています。それも、彼女たちより年下の子どもたちの演技を。そうすることによって「私より年下の子がこんな演技ができるなんて」という思いが向上心につながってきます。子供チームのベトナム人のコーチたちと一緒になってどんな練習方法が生徒たちにとっていいのか、今後どのようにしていったらいいのか、何度となく話し合ってやっています。彼女達はとてもまじめに取り組み、とても協力的です。残り約3ヶ月の任期なんですが、彼女たちに私が持つ技術をできるだけたくさん教えていきたいです。
◆最後に協力隊をめざしている人にひとことお願いします。
協力隊員は現地の言葉を覚えて、自分で相手と意思疎通しなければなりません。まさか自分が日本語以外の言語を使って仕事をするとは思いもしなかったんですが、こうやってベトナム語でシンクロを指導していることは、自分にとって自信につながっています。今は、日本ではできなかったことを経験し、いろんなことに挑戦する意欲が湧いて、今後の人生の中でいろんな可能性が広がると思っています。
私のようにシンクロという競技人口の少ないスポーツでも要請があるので、「自分には技術がない」とか「こんな職種はないだろう」と思っている人でも一度JICAのホームページや募集時期に行われる説明会に顔を出してみて下さい。たくさんある職種の中から自分の専門技術を探して、挑戦してみて下さい。
(ベトナムスケッチ2003年1月号) |