さらば愛しき人よ。１０年来の恋人から別れを告げられた。

　29屋さん、こんにちは。私は4年前にベトナムで起業し、悪戦苦闘を重ねつつも「一歩後退、二歩前進」の日々を送っております。実は先月、日本に帰った際、学生の頃から付き合っていた彼女と久しぶりに会ったのですが、なかなかシビアな話になってしまいました。曰く、彼女には彼女の仕事があり、私と一緒にベトナムに来ることは出来ない。好きな気持ちに変わりはないが、離れていることに疲れてしまったので別れたいと言うのです。これまでも何回かはこのような危機があり、その度に乗り越えてはきたのですが、今度ばかりは完全に終わってしまったようです。なんとなくほっとした反面、例えようの無い寂しさも感じる今日この頃、いったいどうすれば良いというのでしょうか?

PN：モーニング・グッド・たかし(32歳：♂独身)

貴男に許された唯一の選択の自由、それは『どの寂しさを選ぶか』ということ。

「私と仕事とどっちが大事なのよ!?｣ というのは、古来よりこのシチュエーションに欠かせない命題で、男女の価値観の違いを端的に表しています。女性側から見ると、あくまでも両者は同一ジャンル上にあり、優先順位がつけられるもの。ところが男性側からしてみると、両者はそれぞれ大事であり、比較するにはあまりにも接点が無いものという捕らえ方になります。

　漫画 ｢美味しんぼ｣ の原作者、雁屋哲氏の書いた名作に ｢野望の王国｣ という大河ロマンがあります。あらすじを説明し始めると、それだけで今月号のスペースが埋まってしまうので涙を呑んで割愛しますが、物語の終盤、日本を支配するという野望(！)を達成するために、最大の障壁となる最愛の実兄を倒すべきか苦悩する主人公は、熱い涙を流しながら親友に問い掛けます。｢兄さんと力を合わせて生きていけたら、どんなに素晴らしいことだろう。だがな…兄さんに協力して生きると言うことは兄さんの生き方に俺の生き方を合わせ、俺の野望を捨てろと言うことだ。夢を捨て、野望を捨て、男は生きられるのか!!｣ そして慟哭の果てに、身を切るような己の選択を告白します。｢…俺は生きられない…。これほど深く兄さんを愛していると言うのに…｣。

「理｣ と ｢情｣ の葛藤があってこそ人間。悩み続けた末に出した答えが正しいか否か、神ならぬ身には分かりません。しかし中途半端な同情と安易な逃避を理由に彼女と居ることを選んだとしても、いつの日か不完全燃焼の夢が氾濫を起こし、恋人と貴男を責め苛む事は必定。今はその孤独とがっぷり四つに組んで、持久戦を闘うべき時。本当に貴男の人生で欠かせないものが何なのか。つまり何をもって ｢成功｣ と考えるのか、よく考えてみてください。貴男が求める ｢青い鳥｣ は、地位か?名誉か?　安らぎか?　そのために何かを犠牲にするのであれば、その哀しみを背負い、己の道を切り開いてください。しかし、貴男が苦しくて負けてしまいそうなときには、その哀しみがきっと背中を押してくれるはず。｢忘れる｣ のではなく、｢刻み付けて｣ 共に歩んで行ってください。

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（2004年12月27日 14:55更新）