そもそもほとんどの人間は、具体的な目標がイメージできない漠然とした不安に対して、即アクションを起こせるほど行動的に出来ていないのです。将来肺癌になるかも…という程度の政府広報の脅しよりも、口臭がもとで素敵な異性に白眼視されることの方が、明確に危機感を感じられること必至。いっそのこと指先と歯がヤニで真っ黄色になって、半径1メートル以内に近寄った人が激怒するくらいの香ばしいフレグランスを醸し出すまでがんばってみては如何でしょうか? 万一彼氏が元ヤンキーもしくは遊び人で、ニコチン風味の接吻が一切気にならないという大気汚染カップルの場合、公共の場に出たら息を吸うのと息を吐くのを停止しましょう。そうすればどこからも文句は出ないはずです。
とはいえ、非喫煙者にしてみれば、タバコの煙を自分の意図しないうちに吸わされているということは、食べたくも無いカレーパンか何かを無理やり口の中にねじ込まれるようなものです。ましてや食事中に人が食ってる横でプカプカやるような人間は、食卓にヘアスプレーを撒くような暴挙を自覚していない、神経ゼロのスカポンタンだと、断言してもよいと思います。どうしてもというのであれば、せめて皆の食事が終わってからにするべきですが、「タバコ吸っていいですか?」と一応聞いてから吸ったとしても、そんな聞かれ方をして「許さん!」と即答できる人はそんなに多くないはず。なので、内心むかっとしてることは想像に難くありません。
自由とは「何をしてもよい」ということではなく、「何をしてはいけないか」を自分で決めることから始まります。ストレス解消が目的ならば、河原に行って砲丸投げでもしておきましょう。健康にもなりますよ、多分。
【今月のまとめ】
その身に染まりては、
いかなる悪事も見えぬものなり。 by 井原西鶴