そうかと思えば、今度は<昇り龍の刺繍のラメ入りガウン>とか、<すごい色のシルクのシャツ(しかもサイズが小さい)>とか、<アニメの図柄のネクタイ(*ッキー・*ウスのニセモノ)>など、絶対に人前では着られないような衣類を自信満々で贈ってくれるのです。無下に断るわけにもいかないしどうすればよいものでしょうか?
客人をもてなすために命をかける気概の中華文明圏の人々。ベトナムもその影響を多分に受けていますので、貴方の取引先やお友達にとって、日本からはるばるやってきた(実際はサイゴンから)貴方をもてなすことは、それが仕事であってもプライベートであっても重大イベントです。一通り用事も済み、和やかに談笑といった段になって、間をつなぐつもりで貴方が不用意に放った一言「いやぁ、立派な壺ですねぇ」。貴方にそのつもりがなくとも、「ああ、この日本人はこの壺が好きなんだ」⇒「じゃあプレゼント」というシンプルかつ過激な結論を貴方に相談せずに出しかねません。私も過去、メコンデルタの農家で、うっかりペットのニシキヘビを誉めたばっかりに、あとで大変な苦労をしました。「李下に冠を正さず」という諺がありますが、遠まわしの催促と受け取られかねない表現をしないこと。また、老若男女・古今東西を問わず、用意された後で「こんなもの、いりません」というと、相手のメンツを潰してしまうことになります。そうなる前に相手がごそごそ用意する気配を察して、上手に断りましょう。
もし有無を言わさず準備されていて、帰り際に渡されたらどうするか。商売の駆け引きが絡んでいるのであれば、「タダより高いものはない」。状況によっては断固として断ることも出来ますが、そうでもない場合には、日本からのお客さん(大邸宅に住む社長さんとか)に欲しがりそうな人がいないか、ベトナム人の現地社員や大家さんなどにあげられないかど、喜びそうな人との付き合いを普段から大事にしてください。モノによっては、こっそりと帰国時にインターネットオークションにかけるという裏技も有効です。うやむやのうちにゴミと化すよりは、心からよろこんでくれるアカの他人にあげてしまった方が、まだマシです。ともあれ、プレゼントそのものよりも、貴方に何かをしてあげようと思った相手の心を汲んであげてください。お金では換算できない大事なものが得られることもありますよ、きっと。
【今月のまとめ】
どうか僕を幸福にしようとしないでください。
それは僕に任せてください。 BY アンドレ・レニエ