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「目立ちたがりなのか、シャイなのか? 日本のTV取材を完全拒否する越妻と大ゲンカ中です」
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29屋さん、聞いてください。先日、知人から、「日本のTV番組がベトナム人と結婚した日本人の日常生活を取材したいらしいので、よかったら出てみないか?」という話を聞いた私。日本に住んでいた頃よく観ていた番組だったし、少し謝礼も出るとの事なので、家に帰って妻に「おい、日本のテレビに出られるぞ!」と喜び勇んで知らせました。ところが意外にも、妻は見る見るうちに不機嫌になり、「絶対にイヤ! あんた1人でどうぞ!」と完全拒否をするのです。ふだん妻は、何かイベントがあるごとに業者に頼んでビデオや写真を撮らせ、演出に細かく口を出し、完成後は必ず友人知人を呼んで試写会を開いたりするので、今回も快諾すると思っていたのですが、まったくもって解せません。いったい何が問題なのでしょうか?
PN:シルベスタローン(32歳♂ 結婚生活3年目)
PN:シルベスタローン(32歳♂ 結婚生活3年目)
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「ベトナム人は、日本人ほどテレビ様をむやみにありがたがらないようです」
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今回のようなケースの場合、問題の根本は「撮られていいもの・悪いもの」についての日本人とベトナム人の感覚の違いであり、その基準になるのは、「日越それぞれのテレビ番組における素人の扱い方」ではないかと、私は考えます。
たとえば日本の場合、バラエティで素人をイジッて笑いものにしたり、ドキュメンタリーなどで一般人の私生活の風景を取材したりすることはよくあるし、取材される側もプロでもないのに「自分が求められる役割」を理解したうえで、時には自虐的に楽しみながら出ている部分があるようです。
ところがベトナム人の場合、たとえ悪意の無い場合においても、自分が人に笑われることが「オイシイ」という認識はありません。「笑わせている」と「笑われている」の区別がついてないのと、「相手にその場の空気をコントロールする権限を与える」=「自分がコントロールされる立場に回ってしまう」ことを無意識のうちに嫌悪しているためと推察されます。
加えて、どこの誰が見ているかわからないような番組で、プライベートの姿や家族の情報を公開することは、赤の他人を全く信用しないベトナムの人々にとって、理解に苦しむおっちょこちょいな所業です。仮に、「ありのままの生活を見せてください」と要求されたからといって、普段着&すっぴんで日常そのままに振舞えば「ふだんお洒落してるくせに、家ではあんな格好でうろちょろしてるのか」と思われるし、見栄をはって豪華な衣食住をセッティングしたりしても「あの野郎、けっこう金持ってやがるな」と妬みの対象になったりして、どちらにしてもロクなことにならない。見せびらかしたいものは「舞台の上のキレイな私」であり、「楽屋」や「トイレ」ではないのです。多少のお金&虚栄心の満足と引き換えに失うものが大きいと感じられるからこそ、奥様は断固拒否されたのではないでしょうか。
一方、結婚式や家族旅行など、非日常のシーンでスイッチが入ってしまうと、異常なまでに写真やビデオへのこだわりを見せるのもベトナム人気質ではあります。だからといって奥様をおだててセルフ・プロデュースさせ、彼女がOKするものだけを自宅外ロケで撮影させたとすれば、それは単なる自主制作。とてもじゃないけどスレッカラシの日本のTV番組制作者&視聴者を満足させられる見世物になるとは思えません。
たとえば、ホーチミン市にある某空手同好会の指導員で、B軍曹(仮名)という人が居ます。身長180センチのコワモテ武道家である彼でさえも、十数年前にベトナム人の奥さんと結婚を決めて、そのプロモーションビデオを撮影した際、奥さんやカメラマンに言われるままに、お花が咲き乱れる公園で「♪うふふふ」「♪まてまて〜、つかまえちゃうぞ〜」とメルヘンな追いかけっこを衆人環視の炎天下で数十分も撮影させられ、切腹ものの恥辱を味わったとか。奥様の趣味嗜好はわかりませんが、貴男が小っぱずかしい目に遭うリスクも高いので、あきらめたほうが身のためです。
結局のところ、貴男がどうしても奥様と共演したいのであれば、ベトナムのTVがふつうに素人をイジッて笑いを取る時代になるまで、気長に待つ以外ないような気がします。ただしその頃には「もう歳だから、しんどい」という肉体的な理由で断られる可能性もあるので、ガッツで説得してみてください。
【今月のまとめ】
「あなたが妻に対して考えていることに、良心の呵責を感じる必要は無い。
彼女の方があなたについて、ずっとよくないことを考えているのだから。」 by ジャン・ロスタン
オフィスジパンング・今日の弁当
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(2008年12月号 / 2008年12月13日 土曜日 11:09JST更新) |