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「話がちがう!のんきな南国暮らしを夢見て来たのに、予想以上の忙しさ&コスト高」 |
はじめまして29屋さん。日本で勤務していた会社の殺人的な人使いの荒さに身も心もくたびれ果てていた私。そこで浮かんだのが、5年前にベトナムで仕事をしていた元勤務先の先輩から聞いた「ベトナムは物価が安くて、ゴハンも美味しい。仕事も気楽だし、生活のストレスがあまりないので暮らしやすかった」という当時の思い出話でした。「1〜2年くらい骨休めのつもりでゆっくりするのもいいかな」と思い、知人のつてで紹介してもらったベトナムの日系企業で現地採用として働きはじめたのですが、実際にベトナムに来てみると、残業や地元日本人社会の行事などが多くてあまり自分の時間も取れないし、家賃や食費もこの数ヶ月間で急騰してしまっていて、まったくのんびりできません。このままがんばるべきなのか、それとも違う国へ行くべきなのか、どうすればいいでしょうか?
PN:ボヘミアン夜想曲(28歳♀:ベトナム在住9ヶ月目)
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「労働の目的は人ぞれぞれ。ただし、低きに流れ続けるのにもブレーキは必要です」 |
海外で仕事をする人間の目的や腰の据え方は千差万別であり、「現地に骨を埋める不退転の覚悟」から、「短期間でもいいから外国で仕事をして将来のキャリアアップに生かしたい」という身軽な動機まで、いろいろなスタンスがあると思います。貴女の場合は「お金をなるべく有効に使いながら南国での暮らしを楽しみたい」という快楽主義が最大のガソリンとなっているようですが、日本の会社で口にすれば怠け者扱いされかねないそのような価値観も、一歩国外に出てしまえば必ずしも非難されるものではないようです。
イソップ童話の「アリとキリギリス」が幼児教材で使われる頻度を見てもわかるように、古来、日本人にとって「絶え間なき労働」は最上の美徳のひとつであると考えられてきました。資源の乏しい農村社会においては、「今年は豊作だけど、来年はどうなるかわからない」という心理から、コツコツと蓄えを積み重ねていくことこそが、真っ当な人間のライフプランとされています。お金のあるなしにかかわらず、公の仕事よりも自分の私生活や感情を優先してしまう人間は「自分勝手」か「怠け者」と見られてしまうのです。
ところが世界的に見れば「別に金があって遊んで暮らせるんなら、それが1番じゃねえの?」という価値観が一般的のようで、キリスト教では「労働は神に課せられた罰」であり、儒教では「額に汗して働くのは卑しい階級」とされているとか。ここベトナムの人々のあいだでも、地道に稼いだ小銭よりは楽して手にした大金のほうが尊敬される傾向が見られ、下宿の家賃さえ滞納しなければ、貴女が何者だろうが誰からも文句を言われることはありません。そういった意味では、他人の視線が常に気になる日本よりは「キリギリス向きの国」であると言えるでしょう。
では、ここ最近の暮らしにくさの原因は何か?というと、原油高による世界的な物価高騰の影響もありますが、「ベトナム人のお金持ちが増えてきたおかげで外国人の財布をアテにしなくてもよくなった」ということでしょう。そうなると日本人の立場も変わり、昔であれば「買ってやるよ」、「借りてやるよ」という「上から目線」で通せていたところが、「売ってください」、「貸してください」とお願いする身に転落してしまったというのが現実です。また、逆に言えば「こちら側からもベトナム人相手の商売が成り立つようになった」ともいえますが、それゆえに日系企業を含む外資系の商業活動が活発になり、現地採用・駐在員を問わず仕事量が激増してしまいました。となれば、日本人として生活しようとするならば、思惑がどうであれ、そのコスト&ノルマが徐々に高くなって当たり前ではないでしょうか。
結局のところ、貴女の現在のお仕事への関わり方は、労働を看板に掲げただけの「リゾート」でしかありません。腹を決めて環境に順応するか、気が済んだら日本社会に戻るかしないと、貴女の持っている瑞々しさは、ぬるま湯な居心地の良さの中でゆっくりと賞味期限が切れていくことでしょう。もし貴女が「もっと物価が安くて、仕事をしなくて済む環境」を求めてさすらい続けたとすると、最後にはどこかの海か山かジャングルにでも行って、現地人レベルの生活を送ることになります。それはそれで、別種の気苦労もあるでしょうから、今立っている場所の足場を固め、より高い場所に跳んでみることをおススメします。ガッツです。
【今月のまとめ】
「ある者は明日に、他の者は来月に、さらに他の者は10年先に希望をかけている。
1人として、今日に生きようとする者がいない」
by ルソー
オフィスジパンング・今日の弁当
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(2008年5月号/2008年5月13日 火曜日 10:25 JST更新) |