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「この道を行けばどうなるものか?兄がベトナム人名義で飲食店経営を計画しているのですが…」 |
はじめまして29屋さん。私の兄はある地方都市で飲食店を経営しているのですが先日、何度目かのベトナム旅行から帰ってくると突然「俺はベトナムに店を出す!」と言い始めました。なんでも、むこうで知り合ったベトナム人が旅行の度にいろいろと親切に世話を焼いてくれ、すっかり仲良くなったとのことで、その人をパートナーに商売をしてみたいとのこと。最初の開店資金を半分ずつ出し合った上で、商売に必要な物件探しや人材確保、登記や契約などの法手続きは名義上の社長になるその人が担当し、兄はノウハウを持ち込んで実際の経営に携わるプランだそうです。私自身は商売のこともベトナムのこともまったくわからないのですが、それにしたって簡単に現地人を信用しすぎじゃないのかな?と心配になってしまいます。実際のところ、どうなのでしょうか?
PN:ミスター・ウォーリー(32歳♂:会社員・日本在住)
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「友情を変質させるほどの利害の対立は、国境を越えるからこそ尚起こりやすいものです」 |
経済発展著しいベトナム社会において、技術や資本に1日以上の長がある外資系企業が数多く誘致されて久しいのですが、飲食業を含む個人商店の規模は、まだまだ参入の規制が厳しく、外国人が手っ取り早く商売を始めるために「ベトナム人の名義人を立てて経営する」という手法が取られることがあります。こういうときにベトナム人の配偶者がいると、運命共同体としてがんばってくれるので1番話は簡単なのですが、問題はアカの他人に名義を借りなければいけないケース。
営業や商品企画などに関しては実質上のオーナー「社長」である外国人が取り仕切るとしても、お役人様や業者との交渉、従業員の管理に関して、アウェイの不利は否めません。その点、ベトナム人同士であれば阿吽の呼吸で落としどころを心得ている部分があり、ベトナム人社長が前面に出て対応してもらえると大いに助かるというのは事実です。が、その一方、この「権力の二重構造」のおかげでエライ目に遭ってしまった人の話は山ほどあるようです。
たとえば「裏で業者からコミッションを取っていた」、「こちらに請求してくる経費が、すべて水増しされていた」、「自分の悪事を告発しようとしたスタッフに濡れ衣を着せて追い出した」などの裏切り行為が発覚したとき、「俺が社長だ!何が悪い!?」と開き直られた上、「イヤなら、俺はこの店を今すぐツブしてもいいんだよ?」と店を人質にとられてしまう。訴訟をおこそうにも、法的にはむこうが社長なのでどうしようもないといった悲惨な例。そこまでいかずとも、ささいな経営方針の対立があった場合にも、最終決定権はベトナム側にあるのですから、ケンカにもなりゃしません。
さらに言えば、事業が軌道に乗ってきた途端、名義上のベトナム人社長が突然牙を剥き、今まで共に歩んできたパートナーを追い出しにかかることも実際によくある話です。貴男のお兄さんの場合、先方と半々の出資比率でスタートされるとのことですが、これも危ない要素です。「100対0」であれば、少なくともスタートの時点では「雇う・雇われる」の関係ですが、50%ずつであれば「じゃあ、俺とあいつは対等の立場だな」というつもりで居て当然なので、貴男のお兄さんの持つノウハウを吸収し終えた段階で、ビジネスライクにパートナー解消を通達される危険性は一層大きいといえます。
結局のところ、貴男のお兄さんが「どれぐらい腰を据えてベトナムにかかわる気があるのか?」にかかっていると思います。もし「ここ数年のマイブームであるベトナム旅行の費用稼ぎや口実つくり」のために考えついたビジネスであれば、限度額を低めに設定した上で、なるべく早く初期投資を回収する方向で臨んだほうがいいでしょう。
しかし、「腰を据えて人生の大勝負を賭けてみたい」という覚悟であれば、何も焦って最初のオファーに飛びつくことはありません。とりあえず「店を出すか出さないか」の決断を保留にしておき、数週間ほど当地で生活してみてはいかがでしょうか?
「名義人とケンカになったときの対抗策」を見つけてからお金をつぎ込んでも、決して遅くはないはず。ガッツです。
【今月のまとめ】
「友とは憎み合ったときのことを考えてつき合え、
敵とは愛し合ったときのことを考えてつき合え。」
by 伊庭貞剛
オフィスジパンング・今日の弁当
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(2008年3月号/2008年3月7日 金曜日 11:28 JST更新) |