「つまらん仲間割れはやめてくれ（泣）！ ベトナム人社員にもっとチームワークが欲しい」

　29屋さん聞いてください。私は、とある日系企業でベトナム人工員を相手に技術指導をしているのですが、ベトナム人同士のチームワークのなさにホトホト呆れ果てる毎日です。1人1人は一生懸命マジメにやっているのですが、いざ数人のグループで仕事をさせてみると、とたんにバラバラ。自分の持っている技術を出し惜しみして同僚に教えなかったり、そのくせ意見やアイデアを募集しても妙に消極的だったりして、なかなか全体のレベルが上がりません。1度、試験的に「グループごとの成績による連帯責任」をボーナスや罰則の評価に導入したところ、結果をめぐって「おまえのせいだ！」と工員同士でつかみ合いのケンカが始まったこともあります。やる気があるのか無いのかよくわからない、こんな彼らを1つにまとめ上げるには、一体何が必要なのでしょうか？

PN：角刈りボンバー2007（34歳：♂ 技術職 ベトナム駐在7ヶ月目)

「馬にはニンジン、ライオンには生肉。では、ヒトには何がご褒美なのか？」

　店主の知人で数年前にベトナムに駐在していた方が、ある日、朝ごはんを食べながら屋台のおばちゃんと世間話をしていたときのお話。早朝から営業して昼前には閉店するというおばちゃんに、「こんなに美味しいんだから、夜遅くまで営業したらもっと儲かるんじゃないの？」と聞いたところ、「ドゥーアン（Du An：食べていくのには十分だから）」という言葉を返され、はっと胸を打たれたそうです。

　物もお金も、欲しがってばかりいてはきりがない。「これで食うには困らず、十分楽しいし、幸せだ」という実感があればこそ、心豊かに生きられる。「この国の人々の底知れない明るさとたくましさの源泉に触れた思いがした」と語っておられました。

　ところが、この「欲の無さ」という美徳は、裏を返すと「粘り強さがない」ということにもつながります。食べ物が安く、家族との同居が一般的なベトナム社会において、いきなり会社を辞めても、即「路頭に迷う」ような羽目にはなりません。また、近年のこの好景気から、「次の仕事もけっこう簡単に見つかるだろう」といった楽観的な憶測が、世間的にも溢れています。日本人であれば「石にかじりついてでもガマン」というようなケースでも、ベトナム人にしてみれば「なんで石なんか、かじらなきゃいけないんだ？」というくらいに話がかみ合わないのは、ある意味しょうがないのかもしれません。

　さらに言えば、従来の「日本方式＝終身雇用」の会社で1歩1歩出世の階段を上がるような、「草履とりから関白へ」といったサクセスストーリーは、ベトナムではあまり一般的ではありません。最初から工員は工員として、マネージャーはマネージャーとして会社と契約し、直属の上司から与えられた仕事に対して、自分の給料分だけ働くのが普通なのです。

　つまり、もし自分の地位を上回るスケールの画期的なアイデアがひらめいたとしても、それを実際に提案するかどうかは別問題。「越権行為かよ!?」と上司や同僚から勘繰られるのは嫌だし、同じ給料なのに余分な仕事が増えるのもたまりません。そこで結局、意欲があってもそれを実現させるのは、「ステップアップした次の職場で」となってしまうのです。

　詰まるところ、「やる気の方向性を、どこにどれだけ向けたら、何を得ることができるのか」というルールが明確でない限り、それぞれのメンバーが、仕事そっちのけで自分の利益や感情を第1に考えるのは仕方がありません。がんばった人が金銭的に報われるシステムを作るか、収入はそれほどでなくとも、将来のスキルアップにつながる環境にするのか。はたまた大きなミスさえ出さ無ければ、ボチボチのんびり仕事をしていて良いのか。やりかたは色々あると思いますが、「細かく・厳しく・温かく」を心がけて、貴男の思い描くビジョンを決してあきらめないことが肝心です。

　途中で「これは」と思う人が抜けたりして、時にはザルで水をすくうような、とてつもない無力感に襲われることもあるかもしれません。でも、困難に耐えて出来上がったシステムこそが、きっと貴男の求めていた「チームワーク」になるはず。ガッツです。

オフィスジパンング・今日の弁当
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（2007年4月号／2007年4月10日 火曜日 10:42 JST更新）