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「ビジネスチャンスか、『捕らぬタヌキ』か?知人の起業欲に何かアドバイスを!」 |
こんにちは、29屋さん。以前、日本の知人から頼まれ、とあるグループのベトナム旅行の案内をしたのですが、そのうちの1人、小さな運送会社の社長さん(50代男性)がすっかりベトナムを気に入り、以来単身でちょくちょく旅行に来るようになりました。ですが、会うと必ず言われるのが「なにかここで商売をしたいので、キミ、手伝ってくれないか?」というお誘い。たとえば「1杯5万ドンのカツ丼屋をやろう!」とか、「人工降雪機を輸入して、『雪見カフェ』とかを作ったら、絶対大繁盛するぞ!」とか。近いうちにボクも日本へ帰国するのでお断りするつもりですが、その社長さんも悪い人ではありません。何度も豪華なメシをご馳走になった手前、できればうまく行って欲しいのですが、なんとなく「ダメそう」な予感もぬぐえません。こういうのは一体、何が問題なのでしょうか?
PN:ゴンザレスたかひろ(23歳:♂ 学生・滞在2年)
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「誰でもできそうな商売に他人が手をつけていないのは、それなりの理由があるものです」 |
「必要は発明の母」という言葉があるように、「潜在的な需要(=あんなのがあったらいいな)というニーズを掘り起こしたところに銭の花が咲く」といいます。ですが、むやみやたらに頑張ればいいというものでないことも、また厳しい現実であります。
貴男の知り合いの社長さんがどれほどの商才に恵まれた方なのか、文面からではよくわかりませんが、往々にして素人さんの「皮算用」というものは、「経験の無さ」を「自分に都合のいい希望的観測」で補う傾向があります。野球で言えば、「ごちゃごちゃむつかしいこと言わんと、ホームラン打って三振とったらええんやろ!?」というようなもので、これでは単に願望を口にしているに過ぎず、チーム運営でもなんでもありません。そんなもんが狙ってやれたら、ペナントレースは毎年ぶっちぎりの優勝じゃないですか。
さらにはこの場合、日越両国の市場規模とか、国民性の違いとか、商慣習の違いとか、いろんなものを受け止めた上でコツコツと基盤を作っていく粘り強さが求められるはず。それなのに最初から、儲かったときの優雅なイメージしか頭に無いようでは、生き馬の目を引っこ抜くベトナムのビジネス社会において生き残れるとは、残念ながら思えません。
余談ですが、実は店主も過去、貴男の状況と似たような申し出を、ある社長さんから受けたことがあります。そのときの先方のアイデアというのが和牛専門のステーキハウス。「もう店の名前は考えてあるぞ!『わぎゅうジュウべえ』というのはどう?」というオチを聞いて、「おいおい、このダジャレが言いたかっただけかよ」と内心呆れはてました(注:柳生十兵衛という名の剣豪が江戸時代に居たそうです)。さらに「狂牛病の問題が片付かない限り無理ですよ」と言ったところ、「でもこの国って、賄賂を払えば何とかなるんじゃないの?」と、明らかにベトナムビジネス事情を勘違いしたまま突き進もうとしていたので、その話はそこまでとさせて頂きました。巻き込まれたら間違いなく苦労させられますので。
そもそも「金出してやるから、店をやってみないか?」という人の野望は、「ベトナムに遊びに来る飛行機代とホテル代と『遊び代」が出ればいい」なんてささやかな満足で済むはずが無く、むしろ「遊び代」こそが、経営圧迫の唯一最大の元凶となる場合だってあります。
「出資金よりも儲けたい。いや、儲からないはずがない!」という思いばかりが先に立つと、長い時間をかけて着実に事業を定着させようという意欲は薄くなる一方。新規ビジネスなんてものは、どんな業界でも、社長の広げた大風呂敷をきっちりと図面を描いて形に仕上げることのできる番頭さんがいてこそ、陽の目を見ることとができるわけです。そして、それにはプロの技術と戦略と組織力にプラスして、運が不可欠。アイデアの「断片」は、いくつ寄せ集めたところで「断片」に過ぎません。貴男のお知り合いが、シビアな現実と戦いつつ、大きな夢を見続けることができるよう、陰ながら生温かい目で見守っていきたいと思います。
【今月のまとめ】
「心血を注いで命がけで書いた作品にも、ゲラゲラ笑い出さずにいられないものがあるだろう。この場合、残酷だがその笑いがやっぱりいちばん親切な批評だ。」 by 林達夫
オフィスジパンング・今日の弁当
29屋さんの日記、他ベトナムの宅配弁当店オフィスジパングの弁当ニュースなど。
http://blog.livedoor.jp/info29/
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(2007年1月号/2007年1月4日 木曜日 10:48JST更新) |