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「情けは人のためならず? ゆきずりの日本人旅行者との距離感を、どう計ればいいのか?」 |
29屋さん、こんにちは。私の家は安宿街から近く、仕事の行き帰りや休日など、よく日本人旅行者と遭遇します。ガイドブック片手に道に迷っていたり、あからさまに怪しそうなシクロにノコノコついていきそうだったり。「ここは同胞として声をかけるべきだろうか?」と思い、勇気をふりしぼって「どうかしました?」と話しかけても「いえ、忙しいので結構です」と言われたり、「ナンパ? おとといおいで!」と冷ややかな目で無視されたりしてしまいます。一方、ひとりでのんびりコーヒーを飲んでいると、見知らぬ若者から「日本人ですよね! 話し相手が欲しかったんですよ〜!!」と勝手に相席された上に貧乏旅行自慢を小1時間も聞かされる破目になることもあり、自分の「お人好しぶり」で得をしたことがありません。余計なおせっかいはしない方がいいのでしょうか?
PN:シャア専用なまはげ@恐ろしさ3倍(27歳:♂ 現地採用2年目)
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「親切心も下心も、受け取る側の気分次第。過剰な期待は禁物です」 |
当地の在住者である貴男が「仕事が終わって、ホッと一息=日常モード」であるのに対し、旅行者の皆さんは「異国ベトナムへの海外旅行=非日常モード」のスイッチがONになっている状態です。ガイドブックの「ニコニコしながら話しかけてくるやつは、泥棒か詐欺師だ!」というオドシ文句を読んで必要以上に神経質になっていたとしても、まあ仕方がありません。
とはいえ、声をかける相手が若い女性だったりした場合、貴男の心の中のどこかに、「危ないところをありがとうございます。よかったら今夜、お食事でも…」という万が一の展開を期待する気持ちが「全くない!」とは言い切れないはず。先方に多少の被害妄想はあれど、なんとなく下心を察知されてしまったからこそ、「照れ隠し」の意味も込めて「そんなつもりじゃなかったのに…」と自分にいいわけをしてるのではないでしょうか。
ただ、相手によっては、「無礼な! 貴様をナンパするほど落ちぶれてはおらぬ!」と本気で激怒したくなるようなケースだってあるでしょうから、それはひとまず置いておくことにして、一般的な「何の下心もないケース」について考えてみることにします。
貴男も、過去のベトナム生活に置いて「おとなげない不親切なオッサン」に冷たくあしらわれて悔しい思いをしたことがあるからこそ、無縁の旅行者に対しても親切心があるのでしょうし、その優しさは素晴らしい。しかし、仕事でも義務でも罰ゲームでもないのですから、気がのらないときにまで敢えてボランティアをする必要などありません。
儒教の聖人・孟子の言葉に「惻隠(そくいん)の情」というものがあります。これは、「目の前で幼い子供が井戸に落ちそうになっているのを見たら、どんな悪人でも駆け寄って助けるだろ? だから、人間はみんな善人なんだよ」という真理だそうです。しかし、いかなる聖人君子といえども、所詮は人間。年中無休で完璧な善行をやり続けることは不可能ではないでしょうか?
たとえば、ある日。孟子が家を出る直前に古女房とささいなことで口げんかをして、むしゃくしゃした気分で歩いている途中に、井戸端で子供を助けたとします。ですが、せっかく助けてあげた幼児が、感謝の言葉の代わりに「よけーなことするな、このハゲじじい!」などと悪態をついたりすれば、果たして「おお、よしよし。元気だねえ」とニコニコしていられるものでしょうか? むしろ、ついカッとなって、本気で頭を1発ひっぱたいたりするのが、自然のリアクションというもの。人間は、機械でも神様でもないのですから、感情の起伏があって当然なのです。
結論としては、下心がベースであれ、親切心がベースであれ、貴男の気分本位で関わり方を決めてしまえばいいのです。特に相手が困っていなさそうでも「今、何時ですか?」と声をかけることはできるし、逆にシクロにぼられて大げんかしている旅行者の傍を平然と無視して通り過ぎるのも貴男のココロ次第。やるならやれ。やらぬならやるな。そして、その出来心の結果を、風のように爽やかに受け止め、その日のビールの肴にし、次の日の活力としてください。
【今月のまとめ】
「♪せっかく来たのに〜 ニッポン人だらけ〜」
「♪お・ま・え・が・来・る・か・ら・じゃぁ!」
by 嘉門達夫
オフィスジパンング・今日の弁当
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(2006年11月号/2006年11月22日 水曜日 13:30JST更新) |