No.97 携帯電話屋
最初に始めた仕事は布売りよ。そのときは店を持たずに、工場の前など人が集まるところで売っていたんだけど、だんだん既製品の洋服が出回りだしてね、売れなくなってきちゃったのよ。それで、2002年に、当時普及しはじめた携帯電話を扱うことにしたの。
家の近所に店を借りて、固定電話と携帯電話との両方を売りながら、携帯電話の構造や修理を、1年がかりで習得したのよ。中古品も扱っているから、買い入れの時にはそういう知識が必要なの。一見新しそうに見えても、中は修理箇所だらけだったりすると、売値は安くなるから、買い入れ時の見極めが大切なのよ。
はじめたばかりの頃は、その見極めに失敗して、売ったあとで客からクレームが来て値引きしなきゃならなくなったこともある。原価割れになってね、損をしたわ。
それから盗品をつかまさないようにもしないとね。買い入れの時は、身分証明書のチェックなんてしないから、注意が必要よ。本体だけで付属品がなかったり、売りに来た人が使い方を知らなかったりすると、盗品の可能性が高いわね。そういうのは、どんなにいい機種でも仕入れないようにしてる。
開店当時の人気ブランドはノキア(NOKIA)だったわね。それにモトローラー(Motorola)も。ノキアは今でも1番人気だけど、2番目はサムスン(SUMSUNG)ね。Sフォン(S Fone)は、値段は安いんだけど電波の状態が悪いから、最近は全然人気がないわね。ブラックベリー(Black Berry)やアイフォン(iPhone)などの高機能携帯電話はあまり売れないから在庫は持っていないけど、注文があれば取り寄せるわ。
ここに置いてあるのは40万VND(約2080円)から1000万VND(約5万2080円)くらいの機種。中古は20万VND(約1040円)くらいからあるわよ。
中古の買い入れ価格は、例えば1年落ちで、大きな傷がなければ、新品の6割りくらいかしら。でもこれは個々の状態によって違うから、一概にはなんとも言えないわね。
電話会社も増えてきた。各社のシム(SIM)カードを扱っているけど、人気があるのはモビフォン(Mobi Fone)とヴィッテル(Viettel)ね。
モビフォンは田舎では電波が弱いけど、都心部では1番状態がいいみたい。ヴィッテルはどちらもよく繋がる上に、5万VND(約260円)で10万VND(約520円)分の通話ができるプリペイドカードが買える、なんていうプロモーションが頻繁にあるから、売り上げを伸ばしてきているわね。ヴィナフォン(Vinaphone)は、田舎では強いんだけど、都心でのつながりが悪いみたい。
今はシムカードを買う時に身分証明書の提示が必要になったけれど、売り上げに影響はないわ。
新しい機種がどんどん発売されるし、買い替える人も多いから、携帯電話の需要はまだまだ見込めると思っているのよ。だから、将来もずっとこうやって携帯電話を扱う仕事をしていきたいわね。
文・構成=笹原亮(ジャアク商会)
イラストレーション=mik ad design
(2009年10月号/2010年1月29日 金曜日 16:30更新)
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