No.95 ダンサー
南中部のクアンナム(Quang Nam)省で生まれて、8歳の時にホーチミン市へ来たんだ。ダンスは18歳の時、労働文化センター(Cung Van Hoa Lao Dong)で基礎を学べる3ヶ月間のコースに参加したのが最初さ。
それからは働きながらいろいろなコースに参加して、2年くらいでホーチミン市文化情報局の試験に合格したんだ。いわば「お墨付きの教師資格」だね。
もちろん資格がなくても教えられるけど、これを持っていれば、各区の教室や青年団の教室で教える時に有利だし、個人で教える時にも箔がつくんだよ。
試験に合格してからは、ダンスを教えながら、競技会に参加するようになったんだ。競技会は、大きな大会が、ハノイ、ホーチミン市、その他ダナン(Da Nang)やカントー(Can Tho)などで開かれるんだけど、年齢別や種目別など、かなり細かいカテゴリーにわけられている。
その中でオレが出場するのは「ラテン3」っていう種目でね、これはラテン系のダンスを3種類組み合わせたもの。その種目で2004年、2005年、2008年に金メダルを取った。競技会はベトナム国内のものだけど、必ず海外からも審判員がやって来る。ちゃんとした国際規格の競技会なんだ。
その他には、ときどき海外からやってくる先生の講習会に参加して、技量を広げて行くんだ。さまざまな種類のダンスがある中で、1、2種類、その専門の先生が来て10日間くらいの講習を受ける。講習の最後には試験があって、先生やプロの審査員の前で、習ったダンスを個人的にアレンジして踊るんだ。その合格証をたくさん持っていることも、ダンス教師のステータスだね。
今は自分のダンス教室で、毎日朝と夜の2回、クラシックダンスを教えているんだ。タンゴとかルンバ、ワルツなんかだね。上級者はいろいろな動きを取り入れたスポーツダンスができるようにもなるんだよ。
それから、パーティ用に個人レッスンをしたり、会社に頼まれて社員に教えたりする。会社ではダンスなんかやりたくないっていう人もいるから大変だね。そういう人たちは、いやいや参加するだけだから全然上達しない。怒りたいのを我慢して、ひとつずつ細かく説明を繰り返して、なんとか興味を持ってもらうようにしているけど、どうしてもダメな時は、会社に「やめた方がいい」って言うよ。でもそれは極端な例でね、中には会社でのダンスレッスンがきっかけで興味を持って、上手くなっていく人もいるから楽しいね。
あとは妻と組んで、ショーに出たりもする。コンサートやパーティなどで踊るんだけど、忙しい時は週に2、3回出演するんだ。
でもこれからは教える方に力を入れて行くつもりさ。自分のダンス教室を大きくしたり、学校で教えたりしたいね。それからダンシングバーを開く、っていう夢もあるんだよ。
文・構成=笹原亮(ジャアク商会)
イラストレーション=mik ad design
(2009年8月号/2010年1月29日 金曜日 16:30更新)
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