No.94 ヨガインストラクター
中部高原のプレイク(Plei Ku)で生まれてね。家は貧しかったけれど親が教育熱心で、幼い頃から英語を勉強させてくれたの。でもだんだん学校にも行けなくなってきて、13歳くらいからは、いろんな仕事をするようになったわ。
16歳のときに家族でホーチミン市へ移って来たの。その頃私は三角筋に問題があって、人の勧めでエアロビクスを始めたのよ。エアロビクスでは身体はあまり良くならなかったけど、すっかりのめり込んで、1年後にはインストラクターになっていたわ。
同時にカフェを経営して稼ぎながら、夜は大学に通ったの。今も在学中で、もうすぐ卒業資格がもらえるのよ。
エアロビクスをやっていたときに、新聞でヨガの記事を読んで興味が沸いて自分で試してみたの。そうしたら身体にいい感じがしたから、小さなヨガ教室を見つけて、1日8時間くらい毎日やったわ。そうしたら、身体の調子がすっかり良くなってね、これはますます続けなければ、って思ったわけ。
その頃、当時ハノイで教えていた日本人の先生に会う機会があって、彼女がホーチミン市に来たときに指導してもらったの。その先生には、ホーチミン市の別の先生を紹介してもらった。そうやっていろんな人から習っているうちに、タイ人の先生に出会ってね、タイでインストラクターの資格取得コースを勉強するように勧められたのよ。
それで、当時やっていたカフェや化粧品店を売って、タイへ行った。コースは1ヶ月で終えたんだけれど、その他にもいろいろなスタイルのヨガがあるから、それらも学んで、結局6ヶ月間タイにいたの。
いったんホーチミン市へ戻ってから、今度は子供や妊婦に教えるコースを勉強するために、シンガポールへ行った。でもタイでもシンガポールでも、身体的なことは教えてくれるけれど、ヨガの精神に関しては学べなかった。だからヨガの本場インドへ行くことにして、ホーチミン市でヨガを教えながらお金を貯めたの。
2003年に初めてインドへ行って、6ヶ月間滞在した。それ以来、毎年通っているわ。インドの各地で、いろいろなスタイルのヨガを習得したり、アーユルヴェーダ(Ayurveda)を学んだりしているの。ホーチミン市でもインド人の先生から学んでいるのよ。
そうやって、総合的な知識を身につけて実践していくのが好きなのね。だから今度は中国で太極拳や伝統中国医学も学びたいと思っているの。
今はヨガ教室で、インストラクターの養成を担当している。たくさんの人が、きちんとヨガを教えられるようになれば、レッスンの受講料も下がるし、地方でもヨガが学べるようになるでしょう。そうすれば、裕福でない人も、ヨガで体調を整えることができる。そんな社会を目指しているのよ
。
まずは自分の家族のために、次に多くの人のために、私のヨガの知識や技術が役立てられれば、こんなに嬉しいことはないわね。
文・構成=笹原亮(ジャアク商会)
イラストレーション=mik ad design
(2009年7月号/2010年1月29日 金曜日 16:30更新)
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