No.89 コンピューター修理
フエ(Hue)の近くの街に生まれてから、ずっとそこで暮らしてたんだけど、大学に通うためにホーチミン市へ出てきたんだ。ホーチミン市百科大学(Dai Hoc Bach Khoa Than Pho Ho Chi Minh)でコンピュータのネットワークとウェブのプログラムについて勉強してね、卒業後にコンピュータ制御のセキュリティカメラのシステム開発会社に入ったんだよ。
だけど家から通うのには遠かったから、2年前に住まいの近くの会社に移ったんだ。
今の会社では大学で勉強したことと違って、コンピュータ部品の販売や取り付け、修理が主な仕事さ。ほとんどはハード関連の修理や部品交換なんだけど、ソフトウェアのインストールなんかの仕事もある。それら自体は難しいことはないけど、月曜から土曜日まで、朝7時から夕方5時まで働くし、そのほかに残業も多いから、忙しいね。
15人の技術スタッフが、オペレーターの指示に従って、いろいろなところへ出かけて行くんだよ。だから前に別の担当者が直したコンピュータを僕が直すこともよくある。でもそんなふうに担当者が変わっても、問題はないんだ。決められたところに決められた部品をはめ込んでいくだけだし、ソフトウェアの不具合も、対処方法は決まっているからね。
コンピュータのことがよくわからないお客さんは多いから、ホントは詳しく説明したいんだけど、時間が足りないんだ。なにしろ会社から1軒あたりの時間を決められているからね。それでも出来るだけ説明するんだけど、そうなるとまたいろいろ尋ねられたり頼まれたりして、どんどん時間が足りなくなっちゃうんだ。そんなわけでお客さんを満足させられないのが1番つらいところ。常連客も新規のお客さんもいるけど、誰に対してもきちんと説明して、分かってもらいたいと思っているんだけどね。
大学の同級生の半数は僕と同じように、専門外の仕事をしているんだ。大きな会社でシステム関連の仕事をしているのは少数だね。あとは自分たちで会社を作ったり、人に教えたり。地方で会社を興して成功しているヤツもいる。
僕だって、できれば専門知識を活かした仕事がしたいんだ。だから旧正月のテト(Tet)に故郷へ戻ったら、いろいろ調べてみるつもりさ。出来るだけ早く、自分の生まれた街で会社を始めたいからね。会社は僕の専門のネットワーク構築を軸に、今やっているような販売や修理もできる幅広いものにしようと思っているんだ。まだまだコンピュータ関連の会社や店が少ない街だから、いまから始めれば需要はあると思うんだよ。
でも、それには資金の問題を解決しなくちゃならないだろ? 場所を借りたり、人を集めたりするのに、一体いくらぐらい必要なのか、ちゃんと調べなくちゃならないよね。それで資金が足りないようなら、もう1、2年は今の仕事を続けて、お金を貯めなきゃならない。もちろんもっといろいろな経験も必要だしね。
文・構成=笹原亮(ジャアク商会)
イラストレーション=mik ad design
(2009年2月号/2009年3月10日 火曜日 0:34更新)
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