バッチャン焼小売店
こうやってホーチミン市の市場のブースでお土産用のバッチャン(Bat Trang)焼を、もう20年も売っているのよ。もっとも昔はビンズン(Binh Duong)焼や、中国・アメリカ製の普通の食器、それに骨董品なども扱っていたけどね。
それが10年前くらいからかねえ、観光客がベンタン(Ben Thanh)市場まで買いにくるようになって、7年くらい前からはバッチャン焼ばかりを扱うようになったのよ。
最初の頃はお皿や茶碗が主な商品だったけど、だんだんといろんなアイテムが増えてきたわね。そういうのは全部バッチャン村から業者が売り込みにくるのよ。以前はいろんな業者から仕入れていたんだけど、今じゃあ2軒にしぼったわ。どっちもバッチャン村に工場があるの。
周りにはバッチャン焼を扱う店がいくつかあるけど、みんなそれぞれ仕入れ先が違う。それで、同じデザインのものでも、仕上げが違ったり、もちろん値段も違うのよ。だから、欲しいものがあったら、何軒か比べてみるといいよ。
この店には100種類くらいのアイテムが置いてあるわ。全部で3000個くらいあるんじゃないかな。あとはこの近くに20平米程の倉庫を借りて、そこに保管してあるの。半年毎に借り賃が上がるから、結構大変なのよ。
店はね、朝8時から夕方6時まで、旧正月のテト(Tet)以外は毎日開けているわ。家が近いから、夕食だけは家族がそろうけど、それ以外はみんなバラバラね。旦那も一緒に仕事をしていて、運搬や納品、それに暇な時は家の仕事も引き受けてくれるから、こうやってずっとここで商売ができるって訳ね。
観光客が多くなると店も忙しくなるわ。だから7〜8月と年末が忙しい。お客は日本人とヨーロッパ人が多いわね。でも、それぞれ好みも買い方も違ってるのよ。
日本人は紅や藍の絵付けものが好き。そして少量をじっくり選んで買って行く。ヨーロッパの人はガラス敷きのお皿なんかの、シンプルなデザインのものが好きね。中には10kg以上買ってくれる人もいて、そういうときはホテルまで無料配達よ。海外発送も頼まれるんだけど、人手がないからね、それはお断りするしかないわ。
新しいデザインは1〜2ヶ月毎。もちろん売れ筋の商品はずっと仕入れるけど、新しいものも置かないと、何度も足を運んでもらえなくなるからね。今は少し前に流行った金魚柄を、レンゲやボウルなどに展開しているのが新しいわね。
観光客でも年に2度3度と来てくれる人もいるから、初めてでも大切にしないとね。あまり強引に客引きしたりしないで、ゆっくり商品を選んでもらったり、壊れたものをすぐに交換したり、たくさん買ったらオマケを付けたり。そうやって地道に営業努力もしているの。それが将来に繋がればいいと思っているのよ。
文・構成=笹原亮(ジャアク商会)
イラストレーション=mik ad design
(2008年2月号/2008年2月21日 木曜日 10:25更新)
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