印刷店マネージャー
韓国の靴工場で品質管理をしていたんだけど、ボスが細かくてね。その上残業は多いし、給料は安いし。それでそこをやめて、近所の人の紹介でシルクスクリーン印刷の職人になったのよ。
全然知らない分野だから不安だったけど、上の人がイチから教えてくれたから助かったわ。
その上司っていうのは、工場のオーナーの弟なんだけど、彼が3年前に独立して、それからずっと誘われていたのよ。だけど、前の工場のオーナーに義理もあるから、後輩が一人前になるまで教えて、今年、2007年の5月から今の会社に移ったの。
移ってからは、全体の管理を任されている。だから、接客から、2人いる職人の管理、その他いろいろ、忙しくなったわ。でもオーナー夫婦もよく知っているし、信用して任せてくれているので、なんだか自分の店みたいな気がしているのよ。
ここではシルクスクリーン印刷しかできないから、オフセット印刷が必要な仕事は外注ね。主にホーチミン市の7区にある工場を使っているけれど、値段と品質の兼ね合いで、他にもいくつかの工場に頼んでいるわ。
注文は名刺が多いわね。だいたい月に200〜300箱くらいかな。その他は領収書とか、洋服やパッケージ用のステッカーとか、レターヘッドや封筒とか。新規のお客さんは少なくて、ほとんどが常連さんね。それでも同業者は多いから、値段と品質には注意を払っているわ。
この仕事はね、デザインがいくら良くても、印刷のクオリティーが低いとアウト。だから、腕のいいスタッフには、他よりもいい条件で働いてもらって、いつも安定して良い品質を保つようにしているのよ。
それでも時には嫌になることもあるわ。例えば名刺1箱だけ、なんてとき。今まで使っていた名刺を持ってきて、同じのをってことが多いけど、1箱のためにロゴをトレースしたり、原稿のレイアウトをしたり。割に合わないことこの上ないんだけど、そういうお客さんが大きな仕事を持ってくるかもしれないし、無下に断れないわね。
今年の5月から、大手銀行の封筒印刷をやっているの。その銀行に勤めている知人の紹介で始めたんだけど、いい仕事だから気合いも入るわ。少しでも安くあげられるように、封筒の口に貼る両面テープは外注せず、私が貼っている。印刷は外注だけど、管理をしっかりやって、いいものを作ってもらっている。こういうときに、日頃の関係が役に立つわね。
そんな努力のおかげか、以来、ずっとオーダーしてくれるようになったの。少しずつ量もふえているし、フライヤーの印刷も頼まれたし。
本当は外注に出しているオフセット印刷も自社工場でやりたいんだけどね。機械は高いし場所もとるし。まあ今は、将来の希望ということにしておくわ。
文・構成=笹原亮(ジャアク商会)
イラストレーション=mik ad design
(2008年1月号/2008年1月15日 火曜日 10:59更新)
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