ウエディングドレス屋
結婚を機に3ヶ月間、縫製の勉強をして、ハノイでテーラーをやったのよ。でもホントに好きなのはウエディングドレスだったから、転業したの。
それから6年間ハノイでウエディングドレスを扱ったけど、子供の教育はホーチミン市の方がいいから、こっちに移ることにした。マーケットも大きいしね。
ハノイは保守的だから、ドレスデザインも古風なものが好まれるわね。長袖で、肌の露出があんまりない形。まあ、気候のせいもあるんだけど。そこへいくとホーチミン市はノースリーヴやストラップが細いものとか、流行を追う人が多いの。
ドレスは基本的には貸し衣装ね。料金は寸法直し代込みで30万ドン(約2220円)から150万ドン(約1万1110円)。在庫は男性用も含めて300着あるわ。ベトナム製だけじゃなくて、香港などから向こうの流行りの商品を輸入したりもするのよ。
ベトナムでは2、3の縫製店にオーダーして作ってもらうの。デザインは雑誌やインターネットで勉強して、それをアレンジ。そうやって年に30着くらい作るわね。
それを1、2年で償却するの。古いものは地方から買い付けに来る人に売り渡すから、ドレス自体は5、6年使われるんじゃないかな。
貸すときにはもちろん寸法を直すわよ。小さくはできるけど、大きくするのは限界があるから、太った人が来たら新しく作り直すこともあるわ。でも、それはまたやせた人に貸せるから、損はしないわね。
結婚シーズンは月に40組以上のカップルが来る。少ない月でも20組くらいはあるかな。だけど、花嫁は普通1人3着、花婿は2着借りるから、かなりのドレスが回転しているわね。それに、写真、ビデオ、メイクアップも5人のスタッフでこなす。そうやってトータルで売り上げを確保するようにしているのよ。
最近はこの辺にも同業者が増えてきたから、ウチはいろいろサービスを考えているわ。例えば2着分の料金で3着貸すとか、大きな写真パネルをサービスするとか。
でも、そういうことも大切だけど、やっぱり基本はデザインね。いかに他の店にない、新しいスタイルのドレスをそろえるかが勝負どころね。だから他店のチェックは欠かせないわ。他店を参考にして、値段を決めたり、新しいデザインを香港やフランス、アメリカの雑誌から学んで、ウチの衣装に反映させるようにしているのよ。
将来は他に支店を持ちたいと思っているの。でも具体的には、まだなにも進んでいないわ。日本などでやっているような、結婚サービスも面白いわね。特別な式場の手配とか、手作り結婚式とか。だけどベトナムでは、まだまだこれからの分野だと思うわ。
文・構成=笹原亮(ジャアク商会)
イラストレーション=mik ad design
(2007年11月号 | 2007年11月29日 木曜日 10:38 JST更新) |