建設資材屋
ベトナムの北部で生まれて、軍で情報関連の仕事をしてたんだけど、1993年に定年になってね。偉いさんは定年が遅いけど、下っ端はすぐ定年を迎えちゃうのさ。
それで、韓国とベトナムのジョイントベンチャーの靴工場に就職したんだ。ガードマンとして入ったんだけど、3ヶ月で内勤になって、最後はマネージャーにまで昇進したよ。
いい仕事だったけど、朝6時から夜10時まで働くから、体がもたなくてね、それで友人たちと建設会社を作って独立したのさ。その会社で3年くらい仕事をしたんだけど、なかなか思うように儲からない。それで仕方なく解散して、今度は1人でこの商売を始めたってわけ。それが2002年のこと。
ホーチミン市郊外のこの辺は、その頃は土地も安かったし、これから家が建ち始めるって時だったから、建築資材の需要も多いとふんだわけさ。買った土地には余裕があったから、砂利や土砂を置くスペースと、屋根だけの倉庫兼事務所を残して、あとは人に貸してるんだ。
客のほとんどは、この近所で家を建てている人だね。だから店は朝6時から開けてるけど、7時から9時くらいまでが1番忙しい。みんな、その日に使う材料を買いに来るからね。ほとんどの人は他の店も回って値段やサービスをチェックするから、営業努力は必要だよ。ここは自分の土地だから、その分安く売る。あとは迅速な配達、偽ブランド品を扱わないのがウチの売り。ここに置いてないタイルなんかの材料も、カタログを見て注文してくれれば仕入れられるよ。
配達は荷物運搬用のシクロとエンジン付きシクロで全部済ませている。2人のスタッフが積み込みから配送まで面倒を見るんだ。それで1日の客は平均で2〜3人。1度来た客は家が完成するまでリピーターになるからね、大切にしないと。
そうやって毎日売っているんだけど、集金は週に1度、まとめて払ってもらうのさ。その方が客も便利だろう?もちろん数は少ないけど、中にはなかなか返済しない客もいるよ。でもそういう客も新築の家を捨てて逃げるわけにはいかないからね、いつかは必ず回収できるのさ。
仕入れは、砂は砂、セメントはセメントと、全部違う業者から買う。仕入れ先の見極めも大切だよ。材料の値段は5年で10%くらい高くなったね。もっとも鉄だけは20%以上の値上がりだ。
扱うのがレンガとか砂利、土なんかが主だから、これまでは掘っ立て小屋同然の店で間に合わせてきたけど、近い将来、敷地全体にきれいな店を建てて、高級インテリアを扱いたいと思っているんだ。家具とか照明器具はもちろんだけど、キッチンやトイレ、バスなんかの水回り関連のちょっと高級感のある品を中心にするつもり。家を建てた人たちが、次にお金をかけるのはインテリアだろう?そんな次のトレンドをうまく掴んでいこうと思っているんだよ。
文・構成=笹原亮(ジャアク商会)
イラストレーション=mik ad design
(2007年10月号 | 2007年10月19日 金曜日 10:38 JST更新) |