小学校の英語教師
ベトナム北部のハイズーン(Hai Duong)省で生まれたんだけど、すぐに南部のタイニン(Tay Ninh)省に引っ越したの。両親がダムの建設現場で働いていた関係で、工事を追って各地を転々としていたのね。でも両親がタイニンに落ち着いたから、短大卒業までタイニンで育った。父だけが単身でダム工事を追いかけるようになったのよ。
教師資格は短大で3年間英語教育の勉強をして、中学校教諭の資格を取ったの。でもタイニンには戻りたくなくて。ホーチミン市で仕事を探したけど見つからなくて、1区で外国人向けのお土産屋の店員を1年。それからマレーシアに出稼ぎに行ったわ。
だけど、縫製工場で働けば月に300万ドン(約2万2730円)以上稼げるって話だったのに、実際には200万ドン(約1万5150円)だった。やめたかったけど、パスポートを管理されていたから、1年の契約期間が終わるまで我慢したのよ。
その後ベトナムに戻ってきて、今度はレストランで働きながら教師の口を探して、やっとホーチミン市郊外の生徒数2000人程の小学校で仕事が見つかった。ホントは中学校が希望だったけど、とにかく教師になりたいと思ってね。
今は1回35分のクラスを週に20回。週2回の普通クラスと週8回の特別クラスがあって、両方教えているわ。授業は朝7時から夕方16時10分までと長いけど、週3回は午前中が休みだし、もちろん土日は休みだから、きつい仕事ではないわね。ホントは週15クラスで基本給が120万ドン(約9090円)の契約だけど、5クラス余分に教えると更に100万ドン(約7580円)程になるの。あとは毎日1時間半、家庭教師のアルバイト。最近、教師のアルバイトが禁止になったけど、みんなやっているし問題はないわね。でも近い将来できなくなると思うから、休日は大学で勉強しているの。卒業すれば高校教師の資格が取れるし、小学校で教え続けるにしても、基本給が上がるしね。
この仕事で大変なのは、相手が子供だということ。小学生はベトナム語だってまだよくわからないのに、そこに英語でしょう、無理があるわ。だから大人と同じには教えられないの。学校で教授法も勉強したけど、実際とは大違い。だからイギリス領事館が後援している講習で、イギリス人から子供専用の教授法を習ったりもしたわ。コツは直接言葉とモノを関連づけること。そうして興味を引いて覚えやすくしていく。あとはおもちゃやビデオを使ったり、遊びながら教えたり、工夫が必要なのよ。
でも、そんな風に教えると効果も上がるし、楽しいことも多いから、将来もこのまま小学校で教えていきたいわね。友達の話だと、中学校や高校じゃ生徒は先生の言うことなんて聞かないから、教えること以外にエネルギーを使って、すごく大変らしい。その点 小学生は先生の言うことを聞くから、給料が安くてもこっちの方がいいと思っているのよ。
文・構成=笹原亮(ジャアク商会)
イラストレーション=mik ad design
(2007年6月号/2007年6月29日 金曜日 10:40 更新) |