コーヒー小売店
1945年から両親が市場でコーヒーを売っていたんだ。今じゃ20からの店があるけど、ここが1番古い。1.5m四方の店を4人で切り盛りしてるんだよ。
両親の店を自然と継ぐことになってね、1970年からやってる。戦後は全部の店が国営になっちゃって、その時は従業員さ。でも1980年からは個人経営がまた認められてね、それからはずっと「あたしの店」だよ。
昔はお茶も自分で味付けしてたけど、今はコーヒーが主だからね、お茶は仕入れるだけになった。コーヒーはね、バンメトート(Buon Ma Thuot)の農園から直接買い付けるんだ。バンメトート産はベトナムで1番おいしいからね。いつも決まった農園から買って、必ずチェックするけど、今のところ問題はないね。悪いものは返せるし、農園はたくさんあるからね。問題があれば仕入れ先を変えればいいのさ。
1回に約2トン、年に3回ほど仕入れるんだ。それをストックしておいて、毎朝2時間近くかけて50kg焙煎する。昔は手作業だったけど、今は機械を使うよ。豆の乾燥具合によって焙煎時間が違ってくるから、つきっきりだね。煙の量で判断するから、経験が必要なんだよ。焙煎で味に違いが出るから、いつもこの店の味になるように気をつけてるんだ。
店で売っているコーヒーは6種類。香りの良いモカと、味が濃いロブスタを、割合を変えてブレンドするんだよ。コーヒーは数ヶ月ごとに値段が変わるんだけど、今は高い時期だね。1番高いのはモカ100%の豆で、今は1kgで24万ドン(約1790円)、安い時でも20万ドン(約1490円)くらいするよ。
豆はブレンドする以外に、香りをよくするためにフレーバーを混ぜたり、色を濃くするためにトウモロコシの粉を混ぜたりすることもある。ベトナム人はそういうのが好きだからね。でも純粋に混ぜ物のない豆もあるから、そっちが好みなら買うときに言っておくれ。ちゃんと用意してあるよ。日本人が好きな浅煎りだってできる。これは注文してもらわないとだめだけど、ある程度の量を買ってくれるなら、お好みにあわせて焙煎するよ。
ベトナムのコーヒーは、アルミのフィルターで煎れるのが1番おいしいね。粉は普通に挽いてスプーン3杯。内蓋で強く押さえるのがコツなんだ。熱いお湯を少し注いで、5分間蒸らす。ここで味が出るから、絶対に急いじゃだめだよ。それから熱いお湯を一気に注いで煎れると、おいしいベトナムコーヒーのできあがり。是非このやりかたで試して欲しいね。
店はね、毎日朝5時から夕方5時まで、年中無休。昔からやってるから家賃は安いし、将来もずっとここでコーヒーを売っていきたいと思ってるんだ。2号店、3号店と増やすよりも、ここでしっかり商売をしたいね。これは家族代々の仕事だから、子供たちに引き継いでいきたいと思っているんだよ。
文・構成=笹原亮(ジャアク商会)
イラストレーション=mik ad design
(2007年4月号/2007年4月16日 月曜日 10:19 更新) |