ルゥカン作り
ルゥカン(Ruou Can)ってのは、コホー(Co Ho)族の作るツボ入りの酒さ。なに? エデー(Ede)族も作る? そうらしいねえ。もっと北の方でも似たようなのを作るようだけど、見たこともないし、わからないねえ。
わたしゃコホー族のラック(Lac)グループ出身で、今もラックの村に住んでるよ。昔はどこの家でもルゥカンを作って、壺の2つ3つはいつでもキープしてたんだよ。それで冠婚葬祭や来客のおりに飲んだもんさ。
それがいまじゃあ、ルゥカンを作る家も減ってねえ、この村でも20家族くらいしか作ってないんじゃないかねえ。
作り方は、両親に習ったんだ。それからもう何十年も作り続けてきたから、手順は体が覚えてるよ。昔は家族用に作るだけだったけど、7年ほど前から観光客向けにたくさん作るようになったのさ。
今では1ヶ月に30壺くらい作るかねえ。4〜5個売れたら補充するんだよ。値段は大きさにもよるけど、8万〜18万ドン(約590〜1330円)だ。このところ、原料の米やイーストが高くなってね、今年の初めに6万ドン(約440円)から8万ドン(約590円)に値上げしたんだよ。
ルゥカンを作るにはね、まず米を炊く。これは普通に食べるのと同じ米さ。小さいので1.5kg、大きいのだと6kgほどの米が必要だ。米が炊けたら広げて冷ます。それからドンヨーとよばれる木の根を粉にして、米と混ぜるんだ。もっとも最近じゃあドンヨーは使わないで、もっぱら市販のイーストだけどね。
さて、ここが難しいところでね。何がって? イーストの量さ。何グラムなんて測ったりはしない。第一、昔は秤なんてなかったんだからね。こればっかりは経験だよ。多すぎると強くて苦いルゥカンができるし、少ないと軽くて水と変わらないのになっちゃう。ちょうどいい量を混ぜなきゃならないんだ。
混ぜたらツボに入れるんだけど、まず籾殻を入れて、それから米を入れるんだよ。最後にまた籾殻をいれて、後はじっと待つばかり。そして1ヶ月ほど寝かせるとルゥカンのできあがりだ。その後4ヶ月くらいは持つよ。原料にトウモロコシを混ぜることもある。そうすると発酵が遅くなってね、2ヶ月くらいかかる。その分もっと長く持つけどね。わたしゃどんどん作ってどんどん売るからね、トウモロコシは使わないんだよ。
ツボもねえ、昔はコホー族が作ったのを使っていたんだが、最近は誰も作らなくなっちゃってね。観光客はルゥカンを持って帰ることもあるから、仕方なくその辺で売ってる普通のツボを使ってるんだよ。
もう年だからね、畑仕事はできないし、こうやって家でルゥカンを作って売るのは、いい仕事だねえ。観光客が増えて、もっと売れるようになれば言うことなし。だから、元気なうちはルゥカンを作り続けるつもりさ。
文・構成=笹原亮(ジャアク商会)
イラストレーション=mik ad design
(2006年8月号/2006年8月9日 水曜日 10:30JST更新) |