アイスクリーム売り
もう5年ほど、毎日こうやって自転車にアイスクリームを積んで売り歩いているんだ。オレは北部の出身で、いろんな所へ出稼ぎに行ったよ。市場でものを運んだり、建設現場で働いたりね。それで、ホーチミン市で、知り合いからこの仕事を紹介してもらったのさ。
これ、もともとは外国のアイスクリームブランドだったんだけど、国内メーカーが買い取ってね、名前が変わったんだよ。その時にボーナスの回数が減ったり、制服の支給が年4回から1回になったり、ちょっぴり待遇が悪くなったけど、基本的なシステムは同じさ。
自転車は会社が貸してくれるんだ。ずっと借りっぱなしで、もちろん家に乗って帰ってもいい。それで朝、自転車に乗って代理店に行く。どのくらいの品物を仕入れるかは売り手に任されてるからね、オレは2000〜3000ドン(約15〜20円)の12種類を7本ずつと、もう少し値段の高いのを4〜5本ずつ仕入れることにしてるんだ。それで毎日決まったコースを売り歩く。夕方までずっとだよ。休みは自分で好きな時に取れるので、オレは週1日は休むことにしてるけどね。
暑い季節や夏休みには売り上げが伸びて、途中で仕入れに戻ることもある。でも雨期に入ったばかりの5月頃は、子供は学校だし、季節の変わり目で体調の悪い人が多いから大変さ。
町を回っていると、同業者に出くわすこともあるよ。でもオレの地区の売り手は定員が10人と決まっているから、競争になることはないね。「オマエがそっちで売ってきたなら、オレはこっちに行くよ」ってやっている内に、テリトリーが決まってくるんだよ。
仕入れはね、もう長いことやってて信用もあるから、お金は払わない。売れ残ったら夕方に商品を戻して、精算するわけさ。その日の売り上げを記帳して、1ヶ月たつとコミッションがもらえる。コミッションは売り上げが400万ドン(約2万7970円)に達した月は20%、達しないと15%になっちゃう。でも、もし500万ドン(約3万4970円)、600万ドン(約4万1960円)と伸びれば、それ毎に、ささやかなボーナスをもらえるんだよ。それと、一応定価はあるんだけど、高く売ってもいいことになってる。だからまあ、そういう収入もあるわけさ。
そんなこんなで月の収入は200万ドン(約1万3990円)くらい。女房が野菜を売ってるし、5歳の子供との3人暮らしには困らないよ。
この仕事はね、あぶれることはないし、コンスタントに金になるからいいんだけど、本当は建設作業が好きなんだな。なんたって経験があるし、多少の技術もある。それに家ができたときの嬉しさは、また格別なんだ。だから機会があればまた、建設関係の仕事をしたいと思ってるんだよ。
文・構成=笹原亮(ジャアク商会)
(2006年6月号/2006年6月2日 金曜日 10:59JST更新) |