観光開発
工業高校を卒業してから、国費留学でチェコに行ったんだよ。でもその前にまずハノイで3ヶ月間、チェコ語の特訓さ。それから現地で半年、さらに言葉の勉強をしてから機械工学を学んだんだ。
3年半学校に通って、その後4年半プラハで働いた。その間はチェコの国内だけじゃなくて、周りの国にも遊びに行ったものさ。
1990年、母親の世話をするためにベトナムに戻ってきたんだ。そして政府系の観光会社に職を得た。仕事は観光資源開発で、機械工学とは関係ない分野だったけど、ヨーロッパの観光の現場を見てきた経験があったからね。それから10年かけて、カッティエン、ランビアン、バーナー、フォンニャ、タムコック、ファンシーパン等、ベトナム中のいろんな所へ、現場見学にも行ったよ。だから、それらの経験を活かしてダラット周辺の観光開発計画を立てていくのが俺の仕事だったんだ。だけどやっぱり専門知識が足りなくてね、98年から4年間、働きながらダラット大学でベトナムの文化、特にエスニック文化ってやつについて勉強したよ。
そして2003年からはチュエンラム湖周辺の観光開発プロジェクト会社で働いている。今、世界中から24のプロジェクトが集まっていて、その許可申請も仕事のひとつ。建築計画の書類を用意して建設省と計画投資省から許可を取るんだよ。
すでに政府の許可が下りたのは、今のところその内6つ。例えば引退した老人達向けの施設を作る、なんてのもある。医者も常駐して、スパを隣接させる計画なんだ。他にもホテルや国際会議場、ゴルフ場など、いろいろな計画が動き出したところさ。
中でも興味を持っているのは、エコツーリズムプロジェクト。これは湖の奥一帯を保護区に指定して、徒歩と自転車でしか進入できないようにするプロジェクトでね。なにしろ周辺の森には貴重な動植物も何種類か生息しているし、それに何より、エコツーリズムは世界の流れだろう。でもベトナムではまだまだ始まったばかりの分野だから、先駆者としてしっかりと作り上げていかなきゃならないんだよ。
いよいよいろんなプロジェクトが本格的に動き出すから、これからどんどん忙しくなるね。将来はチュエンラム湖周辺が、国際的なツーリストリゾートになるように今から張り切っているところさ。
そんなわけで、しょっちゅう山の中を歩き回っているんだけど、そうこうするうちに、このエリア近郊の2カ所から、紀元前3万年から紀元前3000年ころの石器と見られる石片を見つけてね、学者もどうやら本物らしいと認めているんだよ。
だからこれから本格的に考古学も勉強したいと思っているところさ。
文・構成=笹原亮(ジャアク商会)
(2006年4月号/2006年4月7日 金曜日 8:41更新) |