日本語観光ガイド
子供の頃から日本に興味があったんだ。だってホンダとかソニーとか、日本の製品って質がいいでしょう。だから大学で日本語を専攻したんだよ。
丁度2回生の時だったかな。日本語ガイドのアルバイト募集があって、友達に誘われて試験を受けたら受かっちゃって。国営の旅行会社だったけど、それからアルバイトをするようになったんだ。
きっかけは偶然みたいなものだったけど、だんだん仕事がおもしろくなってきた。だから本格的にガイドの資格を取ろうと思って、大学を卒業してから2年間、観光ガイドの養成コースで勉強してね、それから試験を受けて、やっと観光総局からのライセンスが取れたんだよ。
お客さんは、一般の観光客の他に、ビジネスで工場や農場などへ視察に来る人も多いね。そういう時はガイドというよりも通訳の仕事になる。そのたびにそれぞれの専門用語を勉強しなくちゃならないから大変だけど、でも知識や人脈が広がるからね、きらいじゃない。一生懸命仕事をすると、次回に指名してくれるお客さんもいて、そんなときは凄く嬉しいね。
日本人は優しいけれど、マナーをきちんと守らないと嫌われると思う。たとえば服装とか、挨拶。細かいことだけれど、そういう第一印象で失敗をすると、仕事がやりにくくなるから、気をつけてるんだ。
旅行中に問題が起きることもあるよ。たとえば以前、60人の団体客をメコンデルタに案内した時のこと。最初2〜3人のお客さんが気分が悪くなったんだけど、結局それから10数人、みんな吐いちゃった。
その時はガイドが2人付いていたから、僕はスピードボートを雇って、具合の悪いお客さんをすぐに町の病院に運んだんだ。5〜6人は点滴を受けて、回復した人からツアーバスに合流してホーチミン市に戻ってもらったよ。
こういう時は、その場でどんどん状況が変わるから、臨機応変に判断して動かなくちゃならないね。いちいち本部に指示を仰いでいたら間に合わないこともあるから。
そういう意味でも、ガイドはいつもいろんなことに対応できるように準備が必要。それに体力的にも凄くきつい。だから、この仕事は気に入っているけど、一生ずっと続けていくのは難しいと思うんだ。
ガイド仲間の多くは自分で店を持ったり会社を経営したりしている。僕もいつかはチャンスを生かして起業しようと思ってるんだ。その時に、きっとガイドの時のコネクションが役に立つと思うしね。
文・構成=笹原亮(ジャアク商会)
(2006年3月号/2006年03月10日 金曜日 8:42更新) |