公衆電話屋兼貸本屋
以前は会社勤めをしてたんだけどね、給料は安いし、ちょうど子供が生まれることもあって、自分で商売をはじめたのよ。上手い具合に自宅が角地で、大通りに面しているから、立地は最高でしょ。
まず最初に電話屋を始めたの。郵便局と契約して、それから区の許可をもらって、電話のブースを設置したの。今は電話機が6台とファックスもあるのよ。この辺にはまだ電話のない家が多いから、利用客は多いわね。いまでもこっちの仕事の方が売り上げが多いわ。それに切手やちょっとした文房具も置いてあるから、それを買う人もいるし。
電話料金はメーターで自動的に換算されるから、それをもらって、1ヶ月毎に電話局に支払うの。その時にコミッションが入るわけ。だから大きな問題はないんだけど、時々電話が繋がっても相手がいなかったり、携帯電話の電波状態が悪くて話せなかったりすることがあって、お金を払わない、なんていう客がいるんだな。困るよね、そういうの。だって料金は発生してるんだもの。そういうときは、細かく説明して払ってもらうしかないのよ。喧嘩腰になっちゃうこともあるけど、とにかく料金は払ってもらわないとねえ。
貸本屋はね、これ全部漫画なの。1万冊くらいはあるかなあ。原作は日本のモノが多いわね。あとは韓国や中国、ベトナムのもあるわ。友達がタンビン区でやっているのを見て、ウチでも始めたのよ。ここは小学校が近いから、客には困らないんだけど、最初はどこでどんなのを仕入れればいいのか分からなくて、試行錯誤だったわ。今じゃ出版社の代理店が、毎週新作を届けてくれるから楽になったけどね。
1日1冊500ドンで貸すんだけど、基本的には本代を保証金として一時的にもらうから、返してくれなくても損にはならないわ。ほとんどちゃんと返してくれるけど、時々なくしちゃったり、凄く面白くて手元に置きたくなっちゃったりすることがあるみたい。みんな5冊とか10冊とか、まとめて借りていくから、毎日200冊くらいは動いてることになるかな。
今はスタッフを2人使って、毎日朝6時から夜10時まで、店を開けているわ。ここが自宅だからそんなに大変ってわけじゃないのよ。あとは、家の2階が空いてるから、将来はインターネットカフェとか喫茶店とか、商売の拡張を考えているんだけどね。まだ具体的には決まってないの。何をするにしても、改装しなきゃいけないから、資金もかかるしね。まあ、もう少しちゃんと計画を練ってから始めるつもり。
文・構成=笹原亮(ジャアク商会)
(2006年1月号/2006年1月25日 水曜日 8:41更新) |