路上パンク修理屋
ナムディン省でオヤジが小さな修理屋をやっててね。12歳くらいの時から、学校に通いながら手伝ってたんだ。オヤジはもともとクアンニン省で電気技師をしてたんだけど、戦争でナムディンに移ったんだよ。
1978年から85年まで軍隊に入って、帰ってきてからはまたオヤジの店で修理屋さ。当時はほとんどが自転車の修理。いや、修理って言うより組み立てでね。古い自転車の部品や、客が買ってくる新しい部品を使って、走れるようなヤツを作ることが主な仕事さ。そんなことしてたからね、自転車の構造には詳しくなったよ。
その頃からずっとホーチミン市に憧れてた。やっぱり街の生活は豊かだし、格好いいしね。それで娘が先にホーチミン市に出て、街なら仕事に事欠かないって言うんで7年前に出てきたんだよ。
その時からずっとホーチミン市に住んでる。商売は大通りまで出てやってるんだ。かなりの交通量だろ。今でこそバイクも増えてきたけど、この辺は自転車で工場に通う人が多いからね、自転車が減ることはないね。朝晩の通勤時間には自転車で道が一杯になるよ。バイクも1日中走ってるし、そんな自転車やバイクの持ち主が主な客だよ。だけど最近は修理屋も多いから、手を抜くとすぐに客を取られちゃう。だからエアスクリュー式の最新工具も買って、素早い修理を心がけてるんだ。
でもね、一番大切なのは細かいところまでちゃんと修理すること。そうすれば技術的に信頼してもらえるだろ。もう一つ大事なのは、精神的な安心感かな。いつ来ても修理できれば安心じゃないか。だから朝7時から夜中まで、雨が降ってもここにいるし、テト(旧暦で祝うベトナムの正月)でも1日しか休まない。その2つに気をつければ、リピーターも多くなるんじゃないかと思ってるんだ。
修理は圧倒的にパンクが多い。多い日には自転車で50台、バイクも10台以上直すよ。だけどパンクは2000〜3000ドン(約15円)だからね、たいした稼ぎにゃならないな。あとは、部品が壊れちゃったヤツ。そういうのには、古いストックで対応したり、新しいのを買いに行ったり、いろいろだね。
この仕事は好きだし、経験はこれっきゃないから、これからもずっと続けていくだろうね。でも、いつか金が貯まったら、路上を卒業して店を持ちたいと思ってるんだ。それにゃあ、もう一稼ぎしなきゃならないけどね。
文・構成=笹原亮(ジャアク商会・Cafe Siesta)
(2005年9月5日 月曜日 8:34JST更新) |