シロアリ退治
もともと韓国系の釣り針工場で働いてたんだけど、伯父さんが害虫駆除の会社を作ってさ、こっちに来いって引っ張られちゃったんだ。従業員6人の小さな会社だよ。社長でもある伯父さんは、元は政府の害虫駆除会社で働いていたんだけど、脱サラ起業だね。だから害虫の駆除方法には詳しいんだ。それでまず彼にいろいろ習うところから仕事を始めたんだ。
覚えなきゃいけないのは害虫の種類。それによって使う薬が違うからね。それから薬の扱い方。毒だからね、へたに扱うと自分が病気になっちゃう。だからしっかり勉強しないと危ないんだよ。一通り勉強したら、次は先輩にくっついて行って実地訓練だね。実際にいろんな害虫を見て、薬の撒き方や分量などを実体験で確認する。そうやっていろいろ覚えてやっと一人前さ。
シロアリの場合、種類は2つ。こいつら、しっかり住み分けるからね。2種類が1カ所にいることは絶対にない。ちゃんと縄張りがあるんだよ。種類と被害状況から虫の数を確認したら、薬を選んで量を決める。薬が体に付かないように服装に気をつけてね、吸ったり飲んだりすると本当にヤバイから、マスクは欠かせない。散布も人に触れないように、壁や家具に穴をあけて中に注入するんだよ。
仕事の注文はほとんどが電話だね。客がシロアリを見つけて、電話をかけてくるんだ。そこで出かけていって、家の大きさやドアの数で見積もりを出す。工場なんかの場合だと、機械で作業することもあるよ。でもねえ、工場は商品が積んであったりして気を遣うことが多いから、大変なんだ。1年契約でね、最初の薬剤散布の後は3ヶ月ごとにチェックして、必要なら薬を再注入する。2年目からは料金が2割ほど割引になるよ。
そのほかに、家を建てる前の土地に薬剤散布をする方法もある。こっちの方が効果は高いね。だからこれは半年後のチェック付きで10年保証なんだ。でも、実は俺、この仕事はあまり好きじゃあないんだ。だけど伯父さんは会社を継げって言うしなあ。本当は縫製器具の修理を勉強して、そういう仕事をしてみたいんだけどねえ。
文・構成=笹原亮(ジャアク商会・Cafe Siesta)
(2005年8月19日 金曜日 8:40JST更新) |