バイク輸出業
生まれはベトナムだけど、育ったのはアメリカさ。バイクが好きでね、モトクロッサーを乗り回してたよ。91年に休暇で、2週間だけ戻って来たんだ。それですっかり気に入っちゃって、半年後には銀行勤めを辞めてこっちに来ちゃった。
最初はホーチミン市のグエンチャイ通りに店を持って、アメリカで仕入れた婦人服を売ってたんだよ。バイク屋を始めたきっかけはね、ある日フォーを食いに行って見かけたランブレッタ。あんまり格好いいんで、買っちゃったんだ。確か100ドルだったよ。それを直して乗ってたら、外国人の友達が欲しがるから、彼らのも見つけてあげてさ。
そんなことをしている内に95年頃からだなあ、注文が入り始めて、2年ほど前からはこれだけで食って行けそうになってきたんで、専業になっちゃった。前はBMWやノートンなんかも扱ったけど、モノがなくなっちゃったからねえ、今はベスパとランブレッタが中心だね。最初の頃は輸出した後で「壊れた」ってクレームが来たりして、無料で部品を送ったこともあるよ。儲けなんか度外視だね。でも最近はいいメカニックもおさえてるし、慣れてきたので、そういうこともなくなった。
バイクは3人の「ヘッドハンター」が、ベトナム全国から探してくるんだ。それを買い取る。空港の近くに借りてる倉庫に30台以上のストックがあるよ。オーダーは主にアメリカやヨーロッパから来るんだけど、受けた後に、それに合わせて修理したり、パーツを入れ替えたりする。それからお客の指定通りにペイントして、最後は自分で試運転さ。そうやって外国に月10台くらい輸出する。ベトナムで手に入らない部品はタイやインドに買い出しにいくんだよ。タイには毎月のように行って、細かい部品を買ってくるんだ。
店は持ってない。維持費もかかるし、そもそも輸出専門だからね、店舗はいらないんだよ。メカニックも自分たちの店で働いてて、お抱えになるのを嫌うしね。ベスパやランブレッタはベトナムにまだたくさん残っているから、当分はこんな風に商売を続けていくつもりさ。
文・構成=笹原亮(ジャアク商会・Cafe Siesta)
(2005年7月11日 月曜日 9:20JST更新) |