スニーカー屋
前はホーチミン市のチョロン地区で古着を売ってたんだけど、カンボジアから安く入ってくるようになってさ。とても太刀打ちできないから、スニーカーを扱い始めたんだ。6年ほど、そのままチョロンで商売をしたよ。その頃のベトナム製は質が悪かったね。外国製のは高くて売れないし。でも最近は高くてもいいものは売れるようになってきた。だから店を街の中心に移したんだ。
ここに来て、かれこれもう7年になるよ。今扱ってるのはほとんどがベトナム製。いろんな工場で輸出用のを作っているけど、B級品や過剰に作ったものは国内に出回るんだよ。それを買いつける。あとは中国製だね。こっちはブランド品まがいが多い。中国から輸入している業者から仕入れるんだ。
ウチでは小売りだけじゃなく、卸も扱っている。両方合わせると月に1500足くらい売れるよ。だけど1足当たりの儲けは2〜3万ドン(約200円)だから、そんなに儲かっている訳じゃあないよな。ナイキとかアディダスなんかのブランドモノは1足90万ドン(約6160円)近いのもあるけど、これが結構売れ筋なんだよ。
スニーカーは、道をバイクで走る人の目に付くように、なるべく外に並べないと売れないんだ。だけどそうすると公安に怒られちゃう。時々罰金を取られるから、困った問題だね。あと大事なことは、スニーカーの中に新聞紙なんかを詰めて、靴を広げてみせることだ。単純なことなんだけど、これをやると売り上げがぜんぜん違ってくるのさ。
街でもやっぱり人の足下が気になるね。テレビや雑誌でもそう。そうやって流行を読んで、売れそうな品を確保するのがこの商売のコツ。売れない靴は問屋に戻せるけど、オレは安い値段をつけて売っちゃうんだ。その方が「安い品物もある店」っていうイメージができるだろ?
この場所、朝は別の人がフォーを売っているから、店を開けるのは9時。それから夜9時まで年中無休だ。スタッフが3人いるから交代で休みを取る。テト前の忙しい時期なんかは10人くらいアルバイトを雇うんだ。本当は毎日10人のスタッフが必要なくらい忙しいといいんだけどね。
文・構成=笹原亮(ジャアク商会・Cafe Siesta)
(2005年5月6日 金曜日 10:11JST更新) |