体重測り屋
写真は恥ずかしいなあ。マスクしたままでいいだろう?北の方で米を作ってたんだけど、体重測りは儲かりそうなんで、土地を担保に人民委員会からお金を借りて機械を買った。中国製でね、2400万ドン(約16万8000円)もするんだよ。だけど売り声代わりの音楽は鳴るし、体重、身長に加えて血圧と心拍数も測れて、結果が紙に印字されるすぐれものなのさ。借金は1年半程で返したから、今じゃあ機械のオーナーだよ。
都会では田舎の倍くらいの値段が取れるからね。旦那の両親に3人の子供を預けて、3年前に2人でホーチミン市に出てきた。田んぼは人に貸してね。それからは1日交代で機械を押して歩いてるよ。そうやって2人で稼いで、月に150〜200万ドン(約1万円〜約1万4000円)くらい残る。それをみんな田舎に送るんだ。両親は年でね、もう仕事はできないから子供の世話だけ頼んでる。残ったお金は貯金して、将来は古くなった家を直したいね。
体重と身長は1回2000ドン(約14円)、血圧と心拍数も2000ドン(約14円)だよ。家族中みんなのを測るような時には、割引することもあるよ。ほとんどの人は体重と身長を測るけど、中高年や老人は血圧・心拍数を測る人も多いよ。最近はベトナムでも健康に気を遣う人が増えてるんだね。田舎では高血圧の人は3割くらいだけど、ホーチミン市では7割以上になる。わたし自身も疲れた時なんかに測ってみるけど、心拍数がちょっと高い程度だね。そういう医学の基礎知識は、田舎の医者に頼んで教えて貰ったんだよ。
毎日たくさん歩くし、雨が降っても休めないから、この仕事も楽じゃないけど、農業に比べて収入はいいからね。田舎の人たちもみんなやりたがってるけど、資金がないのと、子供や両親の世話で土地を離れられない人が多いんだよ。そういう意味じゃあ、わたしたちは恵まれてた。だから、つらいこともあるけど、1年に1回、テトで帰郷するのを楽しみに、もう少しこの仕事を続けていこうと思ってるんだよ。
文・構成=笹原亮(ジャアク商会)
(2004年5月10日 7:54更新) |