再生ゴミ買い入れ屋
ベイチャイバ〜ンって売り声が聞こえたら、あたしが近くにいるんだから声をかけておくれ。空き瓶や空き缶、鉄類、電池や電化製品、古新聞、雑誌、その他高値で買い取るよ。
もともと北のほうで農業の合間に始めた仕事なんだけど、街に出たらもっと金になるってんで、5年前にホーチミン市にやって来たのさ。父ちゃんと子供達は田舎に置いて、単身赴任だよ。
最初は道が分かんないから大変だ。仲間の後をついて回ってさ、道を覚えて独立だよ。同業の仲間たちと部屋を借りて、毎日歩いて屑集め。昼は家で食べて、ちょっと休んで、午後はまた営業だ。1日30kmくらい歩くよ。多い時は50kgくらいの荷を天秤棒で担ぐからキツいけど、重きゃ稼ぎになるからね、頑張って担いじゃう。
一回りしたら、買い入れ業者に行って、自分で紙は紙、アルミはアルミって仕分けだよ。それぞれ値段が違うからね、仕分けてから個別に量って金を貰う。どっかの工場が鉄を多量に買い入れたなんて時は、多少の値上がりはするけど、そんなのは滅多にない。だから値段はだいたい決まってるね。アルミや鉄は効率がいい。瓶はモノによる。工場で再使用できるようなニュクマムの瓶なんかは売れるけど、洋酒の瓶なんかはダメだね。そういうのは引き取らないよ。
毎日休まず働いて、月に80万ドン(約5600円)くらい貯金ができる。それを時々まとめて田舎に送るんだ。子供達はまだ中学生。学費や生活費が必要だからね。父ちゃんも田舎の現場でドカチンやってるから、そこそこ貯金ができるよ。テレビやバイクが欲しいから、少しずつ貯金してるんだ。身体が続く限り、もうちょっと頑張って稼いで、後は田舎でゆっくり暮らせれば、こんなに幸せなことはないと思ってるんだよ。
文・構成=笹原亮(ジャアク商会)
(ベトナムスケッチ2004年4月号) |