花作り名人
今日は親戚の結婚式でな、ネクタイなんぞ締めとるが、もちろん毎日こんな格好じゃあないよ。子供ン時から花が好きじゃった。両親とダナンからダラットに来て、最初は野菜を作っとったんだが、少しずつ花も作るようになったんじゃ。今でこそダラットじゃ花が盛んだが、始めたのはワシなんじゃよ。
花を作る割合がだんだん増えてきて、今じゃあ1万2000平米の畑は花と果樹ばかり。外国からもいろんな種類の花を持ってきて作るようになった。畑の半分、6000平米では菊ばかり作っとるが、ポーランド、フランス、日本、ドイツなどからタネを持ってきているよ。菊は植えてから100日ほどで出荷する。ダラットは年間を通して気候の変化が少ないから、花は一年中咲く。だから10人ほどのスタッフがいつも花の手入れと収穫をしとる。
残りの6000平米では蘭やシンビジューム、サボテン系の花などをハウス栽培じゃ。サボテン系のヤツはタンロンに接ぎ木して、ベトナムでも育つように工夫するんじゃよ。あとは桃じゃな。昔この辺には実を取る桃しかなかったんじゃが、ハノイから花用の桃を持ってきて果樹の桃に接ぎ木をした。そうやって品種改良を重ね、強くてきれいな色で、害虫に強いモノを作る。今じゃあテト用にたくさんの花を出荷しとるよ。
そんな風に好きな花作りをしてきたんじゃが、いまじゃあ各地の農業大学と共同で品種改良の研究をしたり、学生が泊まりがけで課題の研究に来たりするようになった。日本の大学の先生もみえたことがある。素人が大学の先生と一緒に仕事をするようになったんじゃから、たいした出世じゃろ。将来はぜひ、花を見に外国へ行きたいものじゃな。
文・構成=笹原亮(ジャアク商会)
(ベトナムスケッチ2004年9月号) |