建設作業員
クアンガイ市でサトウキビを作ってたんだけど、そっちの仕事はヨメと弟達に任せて、オイラは肉体労働で現金収入だ。友達がやっているのを見て、こっちの方が向いてそうだってピンと来るものがあったんで、仕事替え。故郷で始めた仕事だけど、すぐにホーチミン市に出てそのまま6年。しんどい仕事も長年やっているうちに楽しくなってきたよ。
仕事は基本的にフリーランス、現場毎の契約だ。今じゃあ他の作業員を束ねて、仕事の指図をしたり、給料の交渉をしたりするようになった。そのまま会社にしてボスに収まるヤツもいるけど、今のところオイラはこのままでいい。将来のことはあまり考えてないんだ。
休めば収入はなし。残業すればそれだけ多く稼げる。単純だろ。だからなるべく休まずに働いて、月に160万ドン(約1万2200円)くらい稼ぐ。住居費は会社支給だから、60万ドン(約4600円)くらいかかる食費以外は家に送金できるよ。その金はヨメがしっかり貯金してる。個人住宅専門だからホテルやオフィスビルの現場に入ったことはないんだ。ホーチミン市で今のボスと知り合ってからは、ずっと彼との契約で働いてる。彼がダラットの仕事を取ったから、今はこうしてダラットでスコップをふるう毎日さ。ここはホーチミン市よりノンビリしてるね。物価が安いし、面倒なしがらみがないから暮らしやすいよ。麻薬や暴力沙汰などの社会悪も少ないしね。雨が降ると寒いけど、毎日ずっと降る訳じゃあないし。
仕事で一番難しいのは階段作りだね。慎重に計測して、高さや幅をしっかり計算しないと、家とマッチしないのができちゃう。やり直せ!ってんで、完成してたのを壊したこともあるよ。昔の話だけどね。
文・構成=笹原亮(ジャアク商会)
(ベトナムスケッチ2004年8月号) |