自転車行商バンクン屋
92年に北からブンタオに出てきて、亭主と一緒に豆腐屋を始めたの。4年ほどやって、バンクン屋に商売替えをして、商売は順調だったんだけど、夫婦仲がこじれてね、あたしだけホーチミン市に出てきちゃった。3人の子供と亭主はいまでもブンタオに住んでいるわ。まだ離婚はしてないけど、もうよりを戻すつもりはないのよ。
他にはなにもできないから、ここでもバンクン屋をやっているの。月に60万ドン(約4600円)で借りた家でバンクン屋を開いたけど、かんばしくなくて、初心に戻って自転車行商に切り替えたのよ。夕方材料を準備して、朝は1時に起きてバンクンを作る。40kgくらい作るから、100人分以上よね。それを5時半くらいから自転車で売り歩く。いつもだいたい同じコースを廻って、10時くらいには売り切るのよ。
タレはヌクマムと砂糖、唐辛子、水で作る。レモンや酢を入れるともたないから入れてないの。買った人は好みで入れてね。バンクンの皮は無添加よ。防腐剤を入れる人もいるけど、あたしはその日に売り切るからそんなものは必要ないのよ。
休みはテトの2日間だけ。ブンタオに行って子供の顔を見ておしまい。あとは年中無休で働いてるのよ。1ヶ月で200万ドン(約1万5000円)くらいの収入になるけど、家賃が高いからね。その家賃を活かすために、店を開くつもりなの。でもバンクン屋は失敗したからね、今度はお粥屋にしようと思ってる。妹が他のお粥屋で働いてるから、一緒にやろうって相談しているところよ。
お粥屋を開いても、あたしはずっとバンクンを売り歩くつもり。今はお得意さんも多くなって、安定して稼げるから、やめる気はないのよね。
文・構成=笹原亮(ジャアク商会)
(ベトナムスケッチ2004年7月号) |