世界の子どもたちに教えたい、野球の楽しさとワクワクを

名球会がベトナムにやって来た。2017年2月のハノイに続き、9月は南部で少年野球教室「名球会ASEANベースボールプロジェクトinベトナム」が開催。現役時代に通算284勝を挙げた山田久志氏（写真右）がピッチングを、2050本安打を打った和田一浩氏（同左）がバッティングを教えるという豪華版だ。

―　名球会がアセアン各国で野球を教えているのですね？

山田　3年前から始めました。私はカンボジア、マレーシア、インドネシアなどでも教えており、ベトナムは2回目。来春にブルネイとラオスでも開催予定で、それで全10ヶ国制覇です（笑）。 今回もそうですが、主に現地の日本人とアジアの子どもたちが対象です。日本の子どもにとって野球は身近ですが、アジアでは「野球って何？」という子どもも多い。そのため教え方は異なるのですが、野球を始めると楽しくなってワクワクしてくれるのはどんな子でも同じです。

―　教え方で気を付けていることは何ですか？

和田　山田さんも同じですが、理解できるように、意味がわかるように、簡単に教えています。今日伝えたのは2つだけ。バットは手ではなく指で握ることと、思い切り振ることです。子どもは上手にやりたいという気持ちが強く、周りに友達もいるから失敗を気にしてしまう。だから、「空振りしてもいいんだ。思い切っていけ」と言うと、気持ちのブレーキが外れて体が動く。それだけでガラッと変わり、球が当たって飛ぶようになるんです。 山田　ピッチングで大切なのは体を目いっぱい使うこと。キャッチボールの延長ですから、これが基本中の基本。ただ、頭でわかっていても体が覚えていない子が多いから、体で覚えてもらう。そうすると自然と上手くなっていきます。 日本の小中学校では野球のクラブや授業がなくなっていて、子どもたちが野球に接する機会が減っています。リトルリーグなどに入る子もいるけれど、その底辺を少しでも広げられたらと思いますね。私を含めて、こうした野球教室をライフワークにしている名球会のメンバーは多いですよ。

―　ベトナムをどう感じますか？

和田　実はベトナムも、海外で野球を教えるのも初めてです。ただ、子どもたちは可愛いし、日本で教えるのと違いはありませんでした。異文化に触れるというのは、この歳（45歳）になっても面白い。ベトナムは暑いけど、日本みたいにまとわりつく暑さじゃないところがいいね（笑）。 山田　ベトナムは何より人がいい。物静かな人が多くて、人間関係がとても楽なんです。食事もおいしくて、アセアンの中では特に日本人に合う国だと感じます。私は世界各国を歩いていますが、2年前に初めて来た時からベトナムのファンになりました。

名球会 ASEANベースボールプロジェクトinベトナム 日本プロ野球のOBを中心に組織する「名球会」のプロジェクト。2017年9月9日（土）に主に日本人野球チーム「サイゴンフェニックス」の小中学生を対象にした野球教室が、ドンナイ省のリクシルヴィナ野球場で開催。10日（日）にはベトナム人野球チームへの野球教室、11日（月）は日本人親子を対象にトークショーがホーチミン市で開催された。名球会への参加資格は投手が通算200勝利か通算250セーブ以上、打者は通算2000安打以上で、限られたスター選手が集う団体だ。 山田久志やまだひさし 1968年に阪急ブレーブス（当時）に入団。2年目から17年連続して2桁勝利をあげ、阪急のエースとしてシリーズ優勝にも大きく貢献し、アンダースロー投手として日本プロ野球最多の通算284勝を達成。 和田一浩わだかずひろ 1997年に西部ライオンズに入団。2004年には3年連続の3割、30本、80打点。2008年に中日ドラゴンズに移籍し2011年日本シリーズ優秀選手。2015年に史上3人目のセ・パ両リーグ1000安打を達成。