<北部民族歌謡大全>
チェオ (Cheo)
ハノイからベトナム全土へ伝わったチェオは、グエン(Nguyen)朝時代に中部の都フエ(Hue)で「ニャニャック(Nha Nhac)」と呼ばれる宮廷音楽に発展したとされている。現在、ニャニャックはユネスコの世界無形遺産として登録されている
ワクワク大好き!
ベトナム版ミュージカル
ベトナム版オペラと紹介されることの多いチェオ。しかし、歌と踊りと楽器の調べがあいまって物語が展開する様は、オペラというより、ミュージカルと言ったほうが馴染みやすいかもしれない。11世紀、村祭りで上演されたことに端を発するチェオは、伝説や歴史、農村の生活などを、歌と踊りで楽しむ庶民のための娯楽だった。チェオのドラムの音が聞こえてくると、村人たちは見に行かずにはいられなかったという。
チェオの魅力は、何と言ってもその優雅な動きにある。役者が歌いながら優雅に手を動かすだけで、観客は夢の世界へと惹き込まれる。内容はシンプルな物語が多く、ハッピーエンドから悲しい恋物語まで、ベトナムの民謡にのせて、時にはしんみり、時には大笑いさせながら、テンポよく進んでいく。また、登場人物の中で扇子を持つ人物は「上流階級」、ホクロをつけた者は「気が強い」、長髪は「善人」で、烏帽子をかぶっているのは「博士」とされるなど、キャラクターが判りやすいのもチェオの特徴だ。衣装は中世の農民の装いが多く、物語によっては村祭りの時だけに着る特別な衣装も使われるなど、華やかな民族衣装が見られるのも、楽しみのひとつと言えるだろう。
1000年の長きにわたり、愛され続けてきたチェオ。ベトナム人が泣いて笑って感動する歌劇を、ぜひ味わってみて欲しい。 |