臆病な動物
西原理恵子の漫画や、「ベトナム怪人紀行」で、謎の動物としてたびたび紹介された、「手のり鹿」。大きさは3〜40センチくらい、つぶらな瞳と割りばしみたいに細い足がなんともキュート。
彼らの本当の日本語名は「ジャワマメジカ」といい、ベトナムをはじめとした東南アジアの密林にひっそりと暮らしている。正しくは鹿というよりも、原始的な哺乳類に近い偶蹄目の動物。非常に臆病で、野生のものは抱えあげると恐怖のあまりショック死してしまうこともあるという!? ホーチミン市動物園にもいるが、人が近づこうものなら波が引くように引くようにサーッと隠れてしまい、姿を見ることはほぼ不可能。
巨大カブトムシもいる
そんな「幻の」手のり鹿を間近で見られるのが、ホーチミン市ゴーヴァップ区にあるこの庭。もともと、ベトナムの国土地理院のような機関で働き、ベトナムの奥地を歩き回ったというオーナー。定年後は、「好きな動物や昆虫に囲まれていたい」と、この庭をミニ動物園さながらにしてしまった、大の動物マニアだ。
現在飼育されているマメジカは、28頭。ペットとしての可能性を探るべく人工交配された4代目で人間にも慣れているので柵の中に入っても大丈夫。マメジカ以外にも、ベトナム原種のカモや、ゼニガメ、天然記念物のコウノトリといった珍しい動物、そしてかつての少年にはこたえられない「コーカサス」という巨大カブトムシの飼育の様子などを見ることができる。自慢の昆虫標本もスゴイ。見学希望者は事前に連絡を。市内から車で約30分。
(ベトナムスケッチ2003年5月号)
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