戦争の語り部にして骨董収集家
クオンおじさんに会いに行こう
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1975年4月30日、まさにベトナム戦争が終った瞬間、その現場にも彼は立ち会っているのだ |
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博物館の一角には戦争中に行方不明または死亡したジャーナリスト達の慰霊碑が |
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今も増えつづける膨大なコレクションは「死んだら全部国に寄贈する」そうだ |
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ベトナム戦争というと、既に歴史上の一事件のように感じられがちだが、実は「時代の生き証人」とも言うべき元・UPIのベトナム人報道カメラマンが、ここホーチミン市に住んでいる。と書くと、どこかいかめしく聞こえてしまうが、このHoang Van Cuong(ホアン・ヴァン・クオン)さん、実はとても気さくで愉快なおっちゃん。Dong Du(ドンユー)通りにある雑貨店「サパ」の上にあるご自宅を訪ねると、壁に飾られている戦争中の写真の解説をしてくれたり、当時の思い出話をしてくれたり、はたまた戦争当時に使っていた貴重なカメラを見せてくれたりの大歓迎ぶり。実際、今までにアメリカ、日本をはじめ国内外の旅行者も数多く訪れているそうだ。
クオンさんが写真を撮るようになったのは、ピューリッツァー賞を受けた日本人カメラマンである沢田教一さんと知り合ったのがきっかけ。1968年に、戦争特派員として当地にやってきた沢田氏と、2年間1つ屋根の下で共同生活をしている。彼に写真の手ほどきをしてくれたのも、UPIに紹介してくれたのも沢田氏。当時、沢田氏は30代前半、片やクオンさんは19歳で、年齢は離れているが、まるで兄弟のような関係だったと言う。また、クオンさんには以前、日本人のガールフレンドもいたとのことで、日本に対してとても親近感を持っているそう。普段ドンユー通りのお宅にはいないので、まず電話を入れ予定を確認してから遊びに行ってみよう。ちなみに、彼はファングーラオ通りに12月オープンした「シクロバー」の共同オーナーで、同店内にも、彼の撮影した写真が飾られている。
そして、このクオンさんのもう一つの顔がアンティークの収集家。Thu Duc (トゥードゥック)に向かう途中の9区にある自宅では、敷地内にある3つの建物に合計1500点の骨董品を所蔵している。クリントン元大統領がベトナムを訪問した際も、わざわざ時間を割いて訪れたとのことで、その時の「証拠写真」も大切に保存されている。コレクションの中身は多種多様。17世紀に日本で使われていたという火縄銃があるかと思えば、18世紀ベトナムグエン朝で使われていたというセラドンの大皿、フランス時代のランプなどなど。「ベトナムで初めての私営アンティーク博物館」だそうだが、実際の建物は「博物館」というより「倉庫」といったほうがピッタリ。しかしその怪しげな建物も、実は1つはサパから、もう1つはフエから移築した由緒ある建物とのこと。曽祖父の代から骨董品の売買を商売にしていたという影響を受けて、なんと10代の頃から骨董を買い始めたそうだ。この博物館、営利目的ではなく「個人的に友人に見てもらうだけ」なので、入場料は取らない。「ドンユー通りの家からトゥードゥックの自宅まで、タクシー代さえ負担してくれたら喜んで案内するよ」だそうだ。ちなみにタクシー代は往復15〜20万ドン(1200円前後)。所要時間は片道約20分。
住所:64 Dong Du St., Dist.1,
E-Mail:cuong upi@yahoo.com
TEL:(08) 8290224
ミュージアムの住所:39A Xa Lo Ha Noi, Dist.9
(ベトナムスケッチ2004年2月号) |