まだまだ長い冬の夜
ハノイオペラハウスで
大人の時間を
◆歴史
オペラハウスは、ハノイを代表するフレンチコロニアルの建築といって異存を唱える人はまずいないだろう。それほどコロニアル建築として認識されていながら、その内部についてはあまり知られていない。ハノイオペラハウスは20世紀初頭、フランスの植民地政府によって、パリのオペラ座、Tuylory城、そして古代ギリシャの建築様式を取り入れて建設された。堂々たる劇場が完成したのは1911年。実に10年の歳月が費やされたのだ。
◆エントランス
最初にお客を迎え入れるエントランスホールの床は、イタリア産の最高級フラッグストーンで覆われ、階段から一直線に敷かれた緋の絨毯は特別な日の気分を盛り上げる演出効果抜群。暖かな光を灯すライトの柄は銅でコーティングされ、クラシックなデザインと相まっていい雰囲気を醸し出している。
◆大ホール
客席数はオペラ席も含めて計598席。規模としては小さいけれど、椅子ひとつをとっても19世紀フランスの様式を模したという、細部にいたるまで忠実にオペラ座を再現した内装はため息もの。圧巻はフランス人アーティストによってデザインされた美しい天井画と巨大なシャンデリア。ベトナムでこんなシャンデリアを維持するのは大丈夫? 安全? と思っていたが、パリのオペラ座と同じシステムでメンテナンスされているそうだ。取材当日、電球の1/3が切れてたのでどのぐらいの頻度で交換するのか尋ねたところ、「たくさん電球が切れたら」とのこと。このあたりは非常にベトナム的。
◆ミラールーム
その名の通り「鏡の間」。荘厳な、それでいて洗練されたデザインはまさに社交場と呼ぶにふさわしい内装。現在ではソロコンサートや観光客向けのベトナム伝統音楽のミニコンサートなどに利用されている。気軽に歌謡コンサートもいいし、ドレスアップしてクラシックコンサートに行くのもハノイならではの夜の過ごし方だ。
(ベトナムスケッチ2003年2月号) |