ローリー先生のメディカルトーク
不妊につながる恐れのある静かな性感染症
ハノイ、ホーチミン両市にある当クリニックで、おそらく一番扱われることの多い性感染症(STD)にクラミジア感染症(性器クラミジア感染症、陰部クラミジア、など)があげられるでしょう。クラミジア感染症に関して厄介な点は、音もたてずに生息するその性格にあるといえます。というのは、自覚症状のない感染者も多く、自分でも気づかないうちに簡単に他人に移してしまう危険性があるからです。クラミジアがベトナムに限らず、全世界的に最も一般的な性感染症といわれる所以はそのためです。
例をあげると、アメリカ合衆国では人口の約3%がクラミジアに感染していると言われています。専門クリニックで治療を受けている人は、全人口の約20%にも達しているそうです。
男性によっては、症状がまったく出ない場合もあり、症状が現われたとしても感染からかなり時間が経過してから、排尿時の痛みなどで初めて自覚するといった具合です。女性も症状が現われない場合があり、骨盤や卵管の炎症で初めて気づくことがあります。長期的には生殖機能に影響を与え、不妊の原因につながる恐れもあります。しかしながら、発見が早ければ抗生物質で速やかに治癒する病気でもあり、必ずしも不妊につながる心配はありません。
病院では医師による泌尿器官と生殖器官の診察があり、梅毒やゴノヘリアといった他の性感染症がないかどうかも調べられます。クラミジアの病原体は、排尿器官、生殖器官からとられた検体から検出され、治療は一般外来治療で行われます。セックスパートナーへの検査や治療も大切なことです。炎症がおさまるまで性行為は避けるのがベストでしょう。
ローリー・ヘイワード医師
ファミリープラクティス医院(ダイアモンドプラザ裏手)
(ベトナムスケッチ2003年8月号) |